江戸パロ

 時代は未定だけど、多分中期ごろ?


 最初は仙文で「霊験お初捕物控」とか「しゃばけ」っぽい感じのノリで、妖怪絡みの事件に退屈しのぎ面白半分で首を突っ込む仙蔵(小間物屋の道楽息子)と、高利貸(両替商?)の末娘お文(もん)(=文次郎)のどたばたコメディっぽい話を考えていました。
 仙蔵は人ならざるものが見聞きできて、人の心も何となく感じとれる。故に愛想は良いがさり気なく人と距離を取っている。その中で彼が信頼するのは隣の両替商の末娘お文。お文は妖に敏感な体質で、存在を見聞きすることはできないが匂いや悪寒などで把握する。結構広範囲で反応するので、見聞きできる仙蔵にとってはちょっとしたレーダーでもある。同時に両替商の偏屈娘、と言われるお文は、普通の娘とはちょっと違って荒々しい言葉遣いに愛想のない態度。正直すぎる性分で損をしているが、仙蔵にとっては逆にそれが信頼できて、何かと事件に関わる時は連れ回している。
 お文自体は隣の仙蔵が美男であるが故にちょっとコンプレックスを持っていて、実はあんまり一緒に歩きたくない。だけど、何だかんだ言って人が良いので結局彼に付き合ってしまう。因みに趣味は計算で、よく神社仏閣などに行っては奉納された計算問題(「お初」の右京之介さんが見ていたようなやつ)を眺めては懐に入れた算盤を取り出して計算している。難しいのは家に持ち帰り、家業の手伝いの後に計算するため、よく寝不足の隈ができている。
 本人は地味地味な格好をしているが、隈取って化粧してそれなりの格好をすれば、そこそこ可愛くなる(はず)。仙蔵はそれを知ってるので、時折飾りっ気のないお文を自宅に連れ込んで、店の品を適当に漁っては彼女を着飾らせようとする。そんな仙蔵をお文は物好きだなあ、おかしいやつだなあ、と本気で思ってる。

 鉢雷もありだよなーって思ってて、初めは「そこそこの武家のひとり娘な雷蔵」と「猿回し(大道芸人)な三郎」で、二人は手に手を取って駆け落ちしたら良いんだよ! と思っていたのですが、途中から三郎は「暴れん坊将軍」のように「身分を偽って猿回しに扮する殿様(どっかの大名)」でも良いんじゃないか、って気がしました。国のあちこちを猿回し姿で巡って、あちこちの悪を暴くんですよ。で、猿回しに扮している三郎と武家の娘であるお雷(らい)(=雷蔵)が恋に落ちて、最終的に殿さまは嫁さんを連れて帰ってくるんですね。

 三郎が居ない城は竹谷と久々知がしっかり守ってるんです。で、竹谷はずっと昔から何くれと自分を可愛がってくれる木下鉄丸(城の重臣で忠臣)と、彼の孫娘で竹谷に懐いている動物好きの眞子(まこ)(=孫兵)と家族ぐるみの付き合いをしていて、殿さまの三郎がいつまで経っても結婚しないから自分も婚期を逃して('A`)ヴァー となってるところに、美しく成長した眞子が嫁に来たら良いと思います。

 久々知は実は女なんだけれど、双子の兄が幼い頃に病で亡くなった時に跡取りがいなくなるのは困る! ってんで、咄嗟に死んだのは妹姫だったと偽られ、その日から兄の振りをして生きている。三郎は知ってるけど、竹谷は知らない。で、美男子で三郎の夜伽もしてんじゃないか、だから三郎は嫁さんを取らないんじゃないか、とよく悪評を立てられる。でも、実際には全くそんな事実なし。
 三郎がお雷を連れて帰って来たので、ようやく重臣組も結婚が何となくしやすくなる(三郎は臣下が先に結婚しようと全く気にしないが、周囲が気にしていた)。で、竹谷は眞子を嫁に取り、久々知も流れで何となく嫁さんをもらわなきゃならなくなる。で、三郎が手配した嫁さんが年上のおタカさん(=タカ丸)。華のある美人だが、やたら背が高くてごつい。久々知と並ぶと久々知の方がちっちゃいので、久々知は何でおタカを選んだのか三郎をちょっと恨んでる。
 で、実際に一緒に暮らしてみれば、何とおタカが男だったことが判明(久々知と同じく、何かの理由で女装をしなければならなかった)、己の正体を隠している久々知は「男に興味はないから。でも、あんたも大変なんだろうし、俺の嫁ってことでここで暮らしときゃ良いよ」とおタカを許容。そのうちに何かトラブルがあって、久々知が女だとおタカにばれる。すったもんだの末、男女逆転で夫婦になる久々知とおタカ。久々知の妊娠中は、久々知は腹に水の溜まる奇病に掛かったとして自宅療養、タカ丸は妊娠したとして腹に布を詰めて生活。何も知らない竹谷が物凄く心配するので、久々知の良心が地味にダメージ。

 こへ滝だと小平太は岡っ引き。で、お滝(=滝夜叉丸)は裕福な商家の娘。何かの事件で関わり合いになって、最終的に小平太が結婚を押し通した。仕方ないので、お滝の両親はお滝に小料理屋をひとつ持たせて、小平太と暮らしていけるようにする。

 で、留伊で留作。留三郎は大工で、最初おいささん(=伊作)と結婚して、三人の子どもを儲ける(用具一年生)。が、おいさは病死し、子どもが三人も居るので後妻さんを大工頭の吉野作造が遠縁の娘さんを世話してくれたのだが、それが歳若いお作(=作兵衛)。留三郎は自分より年上くらいの女性で、お互いにこれからの老後をのんびり生きてくんだと思っていたため、予想以上に若い娘さんが来て(  Д ) ゚ ゚ ←リアルにこんな感じ。
 自分としては嫁さんというよりも子ども三人の母親を望んでいたので(三人もいりゃもう子どもも要らないと思ってる)、人助けも兼ねて(子どもが居るのに夫に先立たれたりして)ちょっと生活に困ってるような、自分に合うような後家さんを……と思っていたので、留三郎はお作と吉野に考え直すように説得する。が、留三郎に懸想していることもあり、子どものあしらいも上手いお作が押し切って夫婦に。最終的には仲の良い夫婦になるが、留三郎はちょっとだけ若い嫁さんに罪悪感(笑)。

 ……ここまで考えて、私はリアルにキモいと思った。
 私はあんまり江戸に詳しくないんで、誰か書いてください。原案ならいくらでも出す!ww


| 戯言::ネタ | 02:40 | comments (x) | trackback (x) |
遠い距離(鉢雷)


 鉢屋三郎がその少女の存在に気付いたのは、彼女の涙を見た後のことだった。
 高校に入学してしばらくして、ようやく〈高校生〉という身分にも慣れてきた頃にひとりの少女とぶつかった。顔も名前も知らぬ彼女は己の顔を見て、驚いたように目を見開いた後に大粒の涙を流す。その大きな瞳から零れる透明な涙が印象的で、鉢屋は彼女の顔が忘れられなかったのだ。
 その少女を再び見たのは、それからしばらく過ぎた放課後の図書室でのこと。
 あの時傍に居た友人に彼女の名前と――下らないが「図書室の天使」と呼ばれていることと、同じ図書委員であるひとつ上の先輩と付き合っているらしいということを聞いた。その時はただ「ふうん」と喉を鳴らして終わり、興味すら持たなかったはずだ。だが、三郎は何故か彼女をもう一度見てみたいような気がして、図書室へと足を運んだのだった。

(――いた)
 当番なのだろう、カウンターに座って貸し出しや返却の作業をしている。穏やかな笑みを常に浮かべる少女は慕われているらしく、不思議と彼女の周りには人が絶えなかった。それでも静謐な空気が乱されないのは、彼女自身がひどく細やかに気を配っている所為と、その後ろで威圧的な空気を醸し出している青年に怯えてのことだろう。
(……あれが、彼氏の〈図書室の主〉か)
 司書よりも蔵書に詳しい、と一部では評判らしい。三郎は記憶から「中在家 長次」という名前を掘り起こして目を眇める。少し離れた書架で本を選ぶ振りをしながら彼らを窺うと、確かにひどく親しい様子は見て取れた。
 少女が囁き声で彼に話しかけ、男はそれに頷く。男の口元に耳を寄せた少女の表情は嫌悪も羞恥も全く感じられない、それが当たり前の様子であり、三郎は何だか面白くない気持ちになる。そんな風に感じる自分に気付かぬまま、三郎は戯れに本を一冊抜いてカウンターへと歩み寄った。
「これ、借ります」
「あ、はい、貸出です、ね……」
 どうやらカウンター内で別の作業も行っているらしい。何かを書き込んでいる手元から顔を上げた少女は、三郎の存在に驚きに目を見開いた。息を飲んで、大きな目を更に丸くする。しかし、すぐに我に返ったのか、少し困ったような表情で笑った。
「そこの貸出カードに名前と学年クラス、今日の日付を書いてください」
 示された先には小さな箱に積まれた紙片。三郎が言われるがままにその紙へ記入している間に、少女は裏表紙の内側に貼られた返却期限リストに新しい判を捺し、カードを抜いて小さなファイルへと入れていた。書き終わった紙を三郎が渡せば、彼女はさっと紙に目を落として何かを確認すると、先程の小さなファイルに三郎の渡した紙を一緒に入れ、最後に本を三郎の方へ押し出した。
「……ごめんね、この間は驚いたでしょう?」
「――覚えてたのか、俺のこと」
 本と共に届いたのは少女の囁き声。最初に驚いてはいたのもの、その後は全く何事もなかったように作業をされたので、三郎はもうなかったことにするのかと思っていたのだ。しかし、作業を終わらせてから、と思っていたのか、三郎が本を受け取りながら小さく返すと、彼女は困ったように笑った。
「ちょっと色々な要因が重なってね、涙が出てきちゃったの。ぶつかった時も随分心配させてしまったようだったし、気にしてないと良いなとは思ってたんだけど……それを言いに行くのも何か変でしょう? 今日会えて良かった」
「あんたも、気にしてたんだ?」
「そりゃあね、突然泣いたら誰だってびっくりするでしょう。……悪いことしたなあって、思ってたから」
 その言葉は柔らかく、優しい。彼女の浮かべるその表情も同じで、三郎は何だかくすぐったいような心地にさせられた。しかし、笑う少女の表情の奥には、深い悲しみが見えた。
「不破?」
「え……!?」
 思わず三郎が名を呼ぶと、彼女は驚いて固まった。何かを探るように彼の顔をじっと見詰める。居心地が悪くなったのは三郎の方で、彼は困惑をそのままに少女の顔を見詰め返した。
「な、何?」
「え? あ、ごめん、その……どうして名前知ってるんだろうと思って」
「ああ、それはあの時一緒に居たダチから聞いたから」
「そっか。……そうだよね。びっくりしちゃった。
 でも、お友達もよく私のこと知ってたね? 私と同じクラスの人じゃなかった気がするけど」
「あんた、有名なんだってさ」
 図書室の天使、と言うのも恥ずかしい呼称を口に上らせれば、彼女は少しだけ顔をしかめた。確かに、呼ばれて嬉しいかと問われれば、普通の感性を持つ人間ならば困惑する呼称である。それは彼女も同じのようで、けれど今まで浮かべていた柔らかい笑みにどこか突き放したような光を宿して溜め息を吐いた。
「買いかぶられてるなあ」
「ふうん……」
「――不破」
 小さく呟いた声にかぶさるように、男の声が届いた。三郎が視線を上げれば、彼らを咎めるように眺める長次の姿。どこか癪に障って顔をしかめる三郎だったが、目の前の少女は慌てたように小さく頭を下げて三郎に向き直った。
「ごめん、図書室は私語厳禁なんだ。――私が話しかけたから、君も怒られてしまったね。鉢屋君、悪かったね」
 三郎は少女の唇から紡がれた己の名前に驚いた。何故知っているのだろう、という疑問は勿論だが、それ以上にその声が余りにも自分の耳に馴染んだことに驚愕する。三郎の驚きに気付いたのだろう、彼女は先程から繰り返し浮かべている困惑した笑みを作り、ゆっくりと口を開いた。
「知ってるよ、私も君の名前」
「何で……」
「だって――」
 そこで少女は一度言葉を切った。瞳を伏せ、小さく息を吐く。その様子が余りにも切なげで、三郎は柄にもなくドキリと心臓が跳ね上がるのを感じた。伏せられた瞳が上げられ、再び三郎を射抜く。己を見詰める少女は小さく笑みを浮かべているのに、何故か泣きそうだと思った。勿論彼女は泣きだすこともなく、ゆっくりと先程三郎が借りた本のカードなどが入っている小さなファイルを示す。
「さっき、自分で書いたの忘れちゃった?」
「あ……そうか」
「うん。もし良かったら、また遊びに来て。この学校の図書室、見ての通り結構な蔵書なんだよ。きっと気に入ると思う。――あ、それと。返却期限はしっかり守ってね」
 三郎は再びファイルを所定の場所へ戻す少女の白い手を眺めながら、小さく頷いた。探るようにその表情を見詰める。俯けばその瞳は影になって見えないが、その色が失望に染まったことを三郎は見逃さなかった。しかし、その理由を尋ねるほどには彼女と親しくない。どうすべきかと逡巡した三郎に気付いて、目の前の少女が顔を上げた。
 大きな悲しみを瞳に隠して、彼女は笑う。――視界に戻った唇が小さく言葉を紡いだ。
「言い忘れてたけど、私は不破 雷だよ。……きちんと自己紹介してなかったから、言っておく」
「……鉢屋 三郎だ」
「知ってる。――またね、鉢屋君」
 三郎は手を上げて挨拶する雷の声に送り出されて、図書室を出た。全く興味のない本が手のひらの中で存在を主張している。三郎はそれをつまらなそうに持ち上げた後、何だかひどく後味の悪い心地で今さっき出てきた図書室の入り口を振り返ったのだった。


| SS::記憶の先 | 02:38 | comments (x) | trackback (x) |
大河チャット〜弐の段〜 ログ
 「大河チャット〜弐の段〜」ログも保守!
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【企画1 大河アンソロ や ら な い か ?】

 前回の突発チャットにて、深夜こっそり草さんと「大河って紙媒体で読みたいですよね。小説の醍醐味はやっぱ紙!」って話をしていたのですが、その時の話題が出ました。
 皆で300〜500Pくらい持ち寄って、1000P超のアンソロを 出 さ な い か ? とネタにしました。因みに移動中も読めるという理由から、版型は新書版優勢。二段組みでも何ページになるのやら……。しかし、いつか……そんな感じで……誰か……(他力本願)。


【企画2 大河リレー や ら な い か ?】

 別に私が某作品のファンというわけではありませんが、このノリで続きます。
 大河アンソロの話が出た際に、ひとり50Pくらいでリレーならできるかもねーという話になり、リレーなら期間限定のHPの方が都合良くない? みたいな感じであれよあれよと美味しく煮詰まりました。
 転生もので、時代別にそれぞれ担当を決めて書く。でも、パラレルもありかも知れない。皆で書いたらいいと思う。――で、次の時代の人はその人の設定を踏まえて書いたり、する。でも、人によって書くスピードもまちまちだから、やっぱり皆で適当に書いたらいいと思う。何でも良いと思う(萌えに貪欲)。

 一応、時代ごとにこへ滝が転生して、何度も出会って、何度も恋をして……っていう展開になり、お互いに記憶あるなし関係なく同じCPであることを主張するために、全編共通の物品もしくはキーワードを使うことが条件。チャットの中では「櫛」「簪」などが有力候補。
 場合によっては日本じゃなくてもいいし、近未来・SFでも良い。記憶の起点は室町が良いんじゃないか?(原作が室町だから)という話も出たので、「ハウルの動く城(宮崎映画版)」っぽく、現在の人(記憶)が過去に干渉するのもありかなあ、とは思ってます。「千年女優」みたい、とはかわさんの談。出た内容は、須佐之男・奇稲田姫〜未来までいけんじゃね? みたいなアバウトさです。
 個人的には他の参加者が別の作家の設定で番外編を書いたり、派生で別CP書いたりしても良いんじゃないかと思ってます。鉢雷とか竹孫とか色々。

 HPだと編集も大変なので、ブログか何かを用いてパスワード共有でやったらどうか? とか。ただ、もしHPスペースにブログを置く場合、CGIの知識がないとメンテその他対応できないなあ、とちょっとショボン。 (´・ω・`) CGIは全然分からなんだ。
 個人的にはライブドアとかfc2の年齢制限版を借りてきて、限定公開(友だちだけに公開する設定とか、パスワード入力しないと入れない設定にしておくやつ。残念ながら使ったことがないので詳しくは知らないのですが)にしたら良いのではないかと思う(勿論、HTML編集で検索除けは入れておく)。
 有志及び環境が整えば、一番達成しやすい企画。


【企画3 忍たま合宿 や ら な い か ?】

 別名「腐のいちの集い」
 箱根? 京都? 豆腐が美味い土地か忍たま縁の土地? もしくは都合の良い場所にて萌え合宿www ただし、基本CPは一応こへ滝の予定だが、参加者の趣味によって雑多に広がるため、合宿中主なCP以外で固定CPの主張があると血みどろの争いになること請け合い。全てのCPを表面上は許容できる猛者のみが参加できる、恐ろしい修行の場……! しかし、参加すると一気に腐のいちレベルがアップする!www
 因みに「腐のいち御一行様」「腐のいちの集い」で旅館取ると恥ずかしいので、「水戸納豆愛好会」や「豆腐友の会」など、正体を偽造して旅館に伝えるが吉。
 みたいな。私も参加したいです。旅費さえあれば……! (´;ω;`)


【パロネタ、その他ネタ】

・ガンダムな忍たま
・戦隊な忍たま(ロボ含む)
・新撰組な忍たま(幕末の倒幕派と佐幕派な忍たま?)
・アンダロなこへ滝
・ミラージュな三郎(超ストーカー?)
・室町長屋でこへ滝
・江戸遊郭な忍たま
・十二国記な忍たま
・ドラえもんな忍たま
・百合で処女喪失なこへ滝
・マリみてなこへ滝
・医者とナース(もしくは患者とナース)なこへ滝
・NPOな医師団(ボランティア? で医療過疎地域に出向いている)なこへ滝
・獣医なこへ滝(動物のお医者さん的な感じ。漆原教授=小平太)
・戦場カメラマンな小平太
・自分の子供に嫉妬して滝に無体を強いる小平太(後に滝は伊作によって保護される)
・パチンコ屋にまつわる忍たま
・妖精な滝(小平太を矯正するためにやってきた妖精さん)
・ラブやんなこへ滝(あちこちからそんな小平太は嫌だとコメント)
・現パロ、オープンスケベな小平太(おお振りの田島ポジション)


| 戯言::ネタ | 02:36 | comments (x) | trackback (x) |
大河チャット〜壱の段〜 ログ
 大切な「大河チャット」のネタも保守!
 ご参加くださった皆様:いろはさん、あきこさん、かわさん、ハルサメさん、草さん、さらいさん、萬田さん、ナミさん




【チャットネタ〜誰か書いてください! の段〜】

時代設定:
 戦国〜江戸(仮想)
 戦国だったら有力大名、江戸だったら将軍な小平太と、彼の命を狙って送り込まれた刺客くのいち滝夜叉丸の話がメイン?

キャラクター設定:

小平太:
 どこかの大名の若当主(もしくは幕府将軍)。女好きの子沢山のロクデナシ。モデルは江戸幕府11代将軍家斉(子どもが50人以上いた)。

滝夜叉丸:
 小平太が大名だったら江戸幕府辺りが裏で糸引いて送り付けた刺客。小平太に嫁ぐはずだった公家の姫様が急死したため、その姫に成り変わって小平太に嫁ぐ。本当はくのいちで、多分13歳。

長次・文次郎:
 小平太の近侍。長次は小平太のストッパー、文次は小言役。

喜八郎・三木ヱ門・タカ丸:
 滝と同じ組織に属する忍。喜八郎と三木は女の子で、滝付きの女房として城に潜入。タカ丸はお洒落大好き滝夜叉姫様専属の髪結いとして同じく入城。後に三木ヱ門は密書の受け渡しの際に捕まり、文次郎に地下牢で拷問を受けた後、彼の温情で解放される。タカ丸は情報を得ようと城の侍女である兵助に近付き、逆に入れ上げてしまう。喜八郎のみがとりあえず組織と連絡を取っている。フリーダム四年。

与四郎・喜三太:
 滝たちが所属する組織の幹部。与四郎は次期当主である喜三太の参謀兼後見人。

三之助・四郎兵衛・金吾:
 三之助は小平太の異母弟(実弟でも可)、四郎兵衛と金吾は小平太の子ども。二人の母は既になく、小平太が引き取った。周囲にまともな大人がおらず、生母の身分も低かったため、腫れもの+厄介者で余りきちんと構われてない。故に嫁いできた滝が何となく世話をするようになる。

久作・きり丸・(怪士丸?):
 小平太の子どもたちの侍従。体育に図書がつく形?




あらすじ:
 力のある君主である小平太に縁談が舞い込んだ。正室として公家の姫様を娶るという話である。勿論、家として否やはない。彼の家は公家の姫を受け入れることに決定した。
 しかし、その姫は嫁ぐ直前に急死しており、急遽ひとりの女子が成り変わることとなった。その女子は姫でもなければ普通の女子でもない、くのいち。目障りな小平太を暗殺するために組織から送り込まれた刺客である。
 成り変わった滝夜叉丸は初夜から小平太の暗殺を試みるも失敗、逆に返り討ちにされてしまう。しかし、暗殺が失敗しても彼女の身分は変わらず正妻のままで、小平太はまるで彼女を歯牙にもかけない。そんな彼と遣り取りをしているうちに、滝夜叉丸は次第に小平太へ惹かれている自分に気付き……。
 忍務と愛情、ふたつの相反する事項に引き裂かれるような思いに揺れる滝夜叉丸と、彼女と出会ったために本当の愛を知った小平太の運命的な恋愛物語。


細かい設定:
・裏山に妖怪が居ても良い(妖狐か蛇な仙蔵、天狗三郎?、鵺雷蔵?、狼竹谷、天狗食満、小天狗用具、河童伊作)
・刺客を送られるのは、将軍家ならまあ……言わずもがなで、大名家なら跡取りを殺して将軍家の子どもを後継ぎの養子に入れるため?
・小平太は女好きのロクデナシ。城の侍女や領地の村娘、町娘たちに手を出しまくり。でも、ドン・ファン(ドン・ジョバンニ)もしくはジャコモ・カサノヴァな小平太はどんな女の子でも虜にしてしまうため、関係を持ってしまう女の子は後を絶たない。けれど、滝が来てからは滝一筋になってゆく。小平太のファム・ファタルな滝夜叉丸。
・小平太には既に何人かの刺客が送られているが、全て返り討ち or メロメロ(くのいち)で忍務失敗のため、最後に滝夜叉丸が選ばれた。
・小平太の初めての子どもは15歳の時に出来た子(種付けは14歳)。
・喧嘩するたびに城が半壊、直すのは用具天狗な食満とその一味。仲直りはえっちで。
・三木ヱ門が密書を奪われ、滝と三木は捕縛。滝は正妻として一応嫁いでいるため、塗籠的な小部屋に監禁、三木ヱ門は地下牢に繋がれて文次に拷問を受ける。
・滝夜叉丸はくのいち秘伝の避妊薬を飲んでいるため、妊娠しない。それが小平太にばれて大目玉くらう。(「もう、呑まないと誓えっ!」「――貴方はわたくしの素性をお忘れですか!? わたくしは貴方を殺すためにこの場所に居るのです!」)
・忍務も大事だけど、次第に小平太に惹かれて、小平太を殺せなくなる滝。でも、己のプライドと威信にかけても忍務は遂行せねばならず、ぐらぐらする。
・忍務が全くはかどらない滝を見て、喜八郎が組織幹部である与四郎に連絡。与四郎は自ら城へと潜入し滝と接触、彼女の状態や意思を測る。が、小平太に見つかり一時撤退。
・その間に喜三太と金吾がお互いの氏素性も知らずに仲良くなっている。
・最終的に小平太暗殺に関しては、組織の上がすげ替えられるか、組織と小平太が和解することによって終了。


更に小ネタ:
・滝夜叉が選ばれた理由は初潮がまだで、自己愛が強かったために小平太になびくことはないだろうという判断から。頭が良くて大人びているため、公家の姫様にするには適切だったこともある。けれど、小平太が身体を開いて女にしたことでいろんな情緒を覚え始め、最終的に小平太に馴染んでいく。
・小平太は母を早くに亡くし、父親とも疎遠な上に後継ぎということで身体の快楽ばかり教えられ、心の方が全く育ってない。故に愛情の違いがよく分からない。
・文次郎は女子供に甘く、いつも仙蔵に叱られる。でも、いざ彼がピンチになるとその情けが彼を救う。因みに恋愛に関しては己に起こる出来事ではないと考えている節があり、どんなフラグも己の手で無意識に叩き折っている。
・三木ヱ門は拷問されて情報を全て吐かされた後、本来ならば殺されるところを女の子だからという理由で文次に逃がされる。それで文次に恩義+恋愛感情を感じる。
・小平太の一番上の子どもは四郎兵衛(7歳くらい?)、続いて金吾(6歳くらい?)。他にも妻子は多いけど(子どもは5人〜10人くらい? 隠し子含む)、あんまり彼は気にしてない。と言うか、奥さんよりも戯れの恋の方が好き?
・金吾と四郎兵衛は滝にめっちゃ懐いてる。正直、父ちゃんよりも新しい母ちゃんの方が好き。で、小平太はくっつき虫の子どもに嫉妬する。
・薬を奪われた滝は小平太の子どもを宿したりする。生まれた子供が滝似の女の子だったバヤイ、小平太は「絶対嫁にはやらん!」と息巻く。でも、自分にそっくりの男に持ってかれると良い。(「あんなのに付いていったらあの子はどれだけ苦労をするか(涙)」「それを貴方が言いますか。貴方がどれだけ(以下略)」「それでも、滝ちゃんは私のこと好きだから、幸せだもんね」「…どの口がそれをおっしゃいますか」)
・忍務と愛に揺れる滝夜叉丸は、結局どちらも選べずに自害を試みる。が、小平太に見つかり阻止され、本気で叱り飛ばされる。


派生ネタ:
・時代パロ>和宮と家茂なこへ滝、義仲と巴御前なこへ滝、利家とまつな鉢雷(「雷蔵におまかせくださりませ!」は名言)、頼朝と政子な文仙、落窪な鉢雷(雷蔵が大雑把過ぎて落窪姫になれない?)、同じく落窪で文三木(髪の色が赤いがために差別を受ける三木)、暴れすぎ将軍(吉宗)な小平太と結局結ばれなかった義理の叔母竹姫な滝
・妖怪も出る、忍務もする、何か色々ある和風ファンタジーでいんじゃね?ww
・妖怪鉢雷は狐か天狗か蛇な鉢屋と鵺の雷蔵。二人で長い時を生きている。もしくは、妖怪鉢屋と生贄雷蔵。最終的に添い遂げるけど、雷蔵は人として生き、三郎を老いて死ぬ。(雷蔵に「人間として三郎と出会って、人間として生きて三郎より先に死んでいく」みたいなことを天狗の三郎に言う?) 鵺の雷蔵は三郎恋しで夜な夜な啼く? 久々知は白蛇、竹谷は狼。
・玉藻の前と陰陽師な文仙。田沢湖の辰子姫な仙蔵。
・十二国記な鉢雷でこへ滝。雷蔵が麒麟? 三郎は散々雷蔵に血を流すのはやめてって言われるのにじゃんじゃんやって、雷蔵が失道しかけて焦る。こへ滝は王道だと王の小平太、麒麟滝。ただし、女王滝に麒麟小平太が「滝ちゃん、そんなに血を流さないと本当にだめなのか?」って言うのも萌える。
・イタリアーノな体育。ラテン系。女と見れば口説かずに居られない小平太。マンマな滝。金吾は稀に居る勤勉なイタリア人w 因みに会計はドイツ。
・八犬伝な忍たま。
・魔女の宅急便なこへ滝。ジジは綾部。最初はずうずうしいぐらいのアタックなトンボ小平太だが、最後はジジの代わりに滝を支える。
・都々逸な題で忍たま。
・893モノで唐獅子牡丹を背中に負う小平太と、姐さんな滝。七松組、診療所な保健、用具は大工、作法は悪徳弁護士で会計は警察か七松組と兄弟杯を交わした組。
・のっぺらぼうか妖怪で鉢雷。以下生ログ提出。萌えの臨場感をお楽しみください。
 お家のために母親に歪んだ愛情で育てられ、臨まぬ家に嫁いぎ、邪険に扱われる雷蔵。
 それに恋をした(のっぺらぼう…でなくとも全然良い)妖怪三郎。彼に初めて優しく扱われ、恋に落ちる雷蔵。
 そこで、雷蔵は「お前をその牢獄から救い出すにはそれしかない」と言われるがままに、夫を殺してしまう。
 とりつかれた三郎を、理をもって解こうとする相手に「それ以上、雷蔵の心に踏み込むなっ!!!」と怒鳴る三郎。
 この三郎、雷蔵に受け入れられると「やったあ!やったあ!」とかいって、飛んで喜ぶんだぜ。かわいい。


どうでも良い小ネタ:
・タイトル案1:全体的なアレで「仮 戦国絵巻」
・タイトル案2:私が出したヘボいタイトル「獅子と牡丹」(唐獅子牡丹で検索すると、禅宗の法話が読めるのですが、そのイメージで)

| 戯言::ネタ | 02:35 | comments (x) | trackback (x) |
27.摩天楼(鉢雷)


「――そういやさ、今更だけど雷(らい)と三郎って幼馴染でも何でもないよな。雷、よく顔を使われて嫌じゃなかったなあ」
 いつものように放課後に四人でだべっている時、ふと思い直したように竹谷 八左ヱ門が口を開いた。それにきょとん、としたのは疑問を突き付けられた当の本人で、彼女は己にくっつくように傍らに座っている少年と顔を見合わせた。その様子に八左ヱ門自身が溜め息を吐き、「お前ら変」と呟く。
「何だ、八左ヱ門。俺と雷の仲が羨ましいのか? お前も早く伊賀崎といちゃいちゃできると良いなあ」
「うるせえ! 真子は今関係ないだろ――ってそうじゃない! お前、変なことでごまかそうとすんなよな! で、雷は嫌じゃなかったのか? と言うか、今でも嫌じゃないのか?」
 嫌なら今すぐ力ずくで止めさせるぞ、と目で語る八左ヱ門に、不破 雷は柔らかい笑みを浮かべた。その表情にはどこにも嫌悪感など見当たらず、八左ヱ門はやはりと思いながらも苦笑する。先程勢い余って浮かせた腰を再び落ち着かせる八左ヱ門に、雷は柔らかくほほ笑みながら語り始めた。
「そりゃ、私も初めは驚いたよ。――だって、突然自分と同じ顔の男の子がやってきて、『君の顔が借りたい』って言うんだもの。訳も分からないし、正直ちょっと気持ち悪いし怖かった」
「ちょっとおおおお、雷さああああん!」
 今だから言える、といった調子の発言にショックを受けたのか鉢屋 三郎が悲鳴を上げた。しかし、雷はそれにも全く気にした様子がない。先程の笑みを崩さず、己に抱き付く三郎の頭を撫でながら続けた。
「でも、うーん……何と言うか、三郎が悪い人には見えなかったし、本当に真剣に言うものだから、まあ良いかなあって」
「――それで良いかなあ、って思う辺り、雷蔵って大物だよな」
「大雑把って言うんだろ」
 えへ、と頭を掻く雷に、八左ヱ門が呆れた声を上げる。それに追随するように、今まで沈黙を守っていた兵が口を開いた。彼女はひとり違うクラスであるため、どうしても彼らの間に起こった出来事にタイムラグを感じてしまう。それが少しだけ淋しく、無意識に唇を尖らせていた。
「でも、はっちゃんも変に思ってたんだ。誰も突っ込まないから、何か知ってるんだと思ってた」
「いや、ぜーんぜん。と言うか、仲良くなって雷に聞くまで、クラスの全員、生き別れの双子じゃないかって言い合ってた。何てったって顔そっくりなんだもんなあ。ま、三郎の変装癖は入学した時からだけど。どんな顔になっても最終的に戻るのは雷の顔だったから、これが素顔なんだろうって皆で噂したりしてな。
 ――それにコイツ、最初の二月くらい本当に雷以外には懐かなかったからさ。話はするけどどっか上っ面でさ、受け流してんの見え見え! 学級委員長の癖に自分から輪に入ってこないし、だから尚更雷と三郎の双子説が有力になったってわけだ」
「うわー……その流れがありありと想像できて嫌だ」
「ま、それだけ俺と雷がラブラブってことだな」
 八左ヱ門の言葉に顔をしかめる兵に、三郎が雷の肩を抱くことで答える。それに雷が三郎を手で押し返し、くすりと笑った。
「まあ、私と三郎が血縁じゃないことは確かだよ。二人とも生みの親がちゃんと居るしね」
「雷、ひどい……!」
 引きはがされる形となった三郎は涙に暮れる仕草をしたが、既に彼の泣き落としには慣れているため、誰ひとりとして反応しない。彼もそれは分かっているのか、特にそれ以上は反応せずに先程と同じポジションへ戻った。
 それでその話は終わり、また別の話題へと移ってゆく。そうして、彼らのいつもの日々が過ぎて行った。


「――でも、あの時は本当に驚いたなあ」
「ん?」
「入学式の直後に物陰に引っ張り込まれたかと思ったら、自分と同じ顔の男の子が突然に真顔で『貴方の顔を貸してください』だもんね。本当に怖かったんだからね? 意味分かんないし」
 兵と八左ヱ門がそれぞれ帰路に就き、雷と三郎もまた同じく家路を辿っている時に雷がぽつりと口を開いた。当時を思い出したのか苦笑を浮かべる雷に、三郎も先程とは違って同じような表情を浮かべた。
「言うなれば一目惚れだったんだよ。――柔らかくて、好きな顔だったんだ。ずっと使っていたいと思ったから、許可を取ろうと思って。こっちだって必死だったし、変人ならまだしも、変態と呼ばれるかもしれないと、本当に清水の舞台――いや、サンシャ○ン60から飛び降りるくらいの気持ちだったんだからな」
「まあ……必死なのは分かったけど」
 突然現れた男の子は、何が何だか分からずにパニックになりかけている雷に対し、「君の顔が好きだ」「訳あって素顔を隠さないといけない」「普段から君の顔を使いたい」とひたすら繰り返したのだ。それに雷は正直なところ、大変気味が悪い思いをしたのだが、何だか余りにも必死だったことと、このまま引き留められると最初の学活に間に合わなくなるという理由から、彼の願いに首を縦に振ったのだった。
「正直、半分くらい冗談だろうと思ってたしねえ……」
 しかし、彼女の予想は全く外れ、三郎はその日以降ずっと今に至るまで雷の顔を普段使いにしている。最初は本当にどうしようかと思ったものだが、そのうちに三郎が少しずつ雷の顔にアレンジを加えて男っぽくしたことと、彼が雷の顔をしている時は本当に〈鉢屋 三郎〉という少年であったため、そのうちに「まあ良っか」と受け入れてしまったのだ。今では自分が大雑把で良かった、と心から思っている。
「――今も嫌かい?」
「ん? 別に。慣れたしね。それに、三郎が私の顔じゃないと、何かちょっと落ち着かないかも」
「素顔の時は?」
「…………分かってて聞いてるでしょ」
 三郎は母親似だ。そして、実を言うと、雷は三郎の母親である世紀の大女優の大ファンなのである(因みにファンクラブの会員でもある)。つまり、雷が彼の素顔にドキドキしないわけがないのだ。――もっとも、ドキドキすることと三郎であることは全く別次元の物事として彼女の中では処理されているのだが。そして、それを三郎も知っているため、彼女の前でだけは素顔を出すことをためらわなかった。
 傍らで揺れる柔らかな手のひらを掴んで、三郎はそれを口元に寄せる。それに雷は顔を真っ赤にして、三郎をねめつけた。
「――馬鹿」
「俺が雷馬鹿なのは雷が一番よく知ってると思うけど」
「知りたくない」
「ひどいなあ。こんなに愛してるのに」
「だから! そういうことサラッと言わないでって何度も……!」
 三郎の言葉に夕焼けに染まる以上に顔を真っ赤にした雷に、彼はひどく甘い笑みを浮かべた。それは雷の顔でありながら、〈鉢屋 三郎〉そのもので。雷はそれを見ただけで何も言うことができなくなり、真っ赤な顔をぷいとそむけて彼から視線を外した。そんな雷を見て三郎が声を立てて笑う。
 ――赤く染まる家路には、二人の影が長くのびていた。


| SS::私立忍ヶ丘学園 | 02:33 | comments (x) | trackback (x) |
錠剤(伊→留)
※注意:この作品には月経、百合の表現が含まれます


「ううー……」
「留(とめ)さん、大丈夫? お腹さすろうか?」
 保健室のベッドの上、身体を丸めて唸る幼馴染に善法寺 伊緒(いお)が囁いた。普段はほとんどないと言って良いくらいの痛みが、今回に限ってはひどく重いらしい。真っ青な顔で痛みを堪える食満 留に、伊緒は同じく青い顔で傍に控えていた。
 彼女が握り締めた痛み止めの薬は既に服用させてある。さすがに即効性があるわけではないから、薬が効き始めるまでは辛抱しなければならない。早く効け、と今のところ役に立っていない錠剤を握り締めながら、伊緒は布団の中で冷や汗をかく幼馴染の腰をさすった。
「伊緒、私なら大丈夫だから……お前は授業戻れ。次もあるだろ」
「私は保健委員だから大丈夫。新野先生もいらっしゃらないし、せめて先生がお戻りになるまでは一緒に居るよ。――あ、そうだ、今湯たんぽ作るね。待ってて、少しは違うはずだから」
 自分を案じて掛けられる言葉に伊緒はにこりと微笑んで首を横に振った。――彼女は知らない。己がこんなにも今幸せだということを。
 叶わぬ恋だと知っていた。己の方がおかしいのだと、何を望むこともできないのだと。それでも彼女の傍に居られるのならば、彼女の役に立てるのならば、こんなに幸せなことはない。伊緒は自分の歪んだ感情に自重しつつ、お湯を沸かして手慣れた様子で湯たんぽを作った。
 しかし、同時に彼女の苦しみが少しでも長引けば良い、と伊緒は心の隅で思う。
 そうすれば、伊緒はずっと彼女の傍に居られる。苦しむ留は勿論見たくないが、彼女の痛みが引いてしまえば、傍に居る大義名分を失ってしまうから。最低だ、と思いながらも、伊緒は手早く湯たんぽをタオルで包んで留の許へと戻った。
「さ、留さん。これお腹に当てて。――腰、さすってあげる。早く楽になると良いね」
「……悪いな、伊緒。私はお前に甘えてばかりだ」
「何を馬鹿なこと。いつも面倒見てもらっているのはこっちだもの、こんな時くらいお世話しないでどうするの。大丈夫、留さんは何も心配しないで良いんだよ。お腹痛いのは留さんの所為じゃないでしょ」
 ゆるゆると布団越しに腰を撫でながら、伊緒は言葉とは裏腹な己の浅ましさに吐き気がする思いだった。――このまま時が止まれば良いのに、そう願ってしまう自分が恐ろしい。また、布団越しに伝わる華奢な腰の感触に欲を感じる己を心底軽蔑する。
 けれど、想いは募るばかりで、決して伊緒の思うように消えてはくれない。何だか泣きたい気持ちになりながら、伊緒は留の腰をさすり続けたのだった。


| SS::私立忍ヶ丘学園 | 02:31 | comments (x) | trackback (x) |
切れた糸の先(鉢雷?)
※注:微妙に小平太→雷蔵(CP要素はなし)





「――お、不破じゃん」
「あ、七松先輩……」
 不破 雷(らい)は己に駆け寄ってくる青年に苦笑を浮かべた。先の記憶はないが、人懐っこい性格は相変わらずだ。誰彼構わず愛想を振りまく様子は懐かしく、けれど同時に少し不愉快にも感じる。それはきっと己が前(さき)の彼を知っている所為だ、と雷はその不快感を胸の奥へ鎮め、己の前にやって来た男を見上げた。
「どうなさったんですか、先輩」
「いや、不破が見えたから」
「そうですか」
 小平太の言葉に雷は困ったように返した。実際の言葉を聞けば、すげなく対応していると言っても良い。けれど、そうは見えないのは雷がいつも柔らかい笑みを浮かべているからだ。
 小平太は常に穏やかな――彼女の先輩であり、己の幼馴染でもある中在家 長次によく似た性質の彼女をひどく気に入っていた。何より、彼女は小平太の好みど真ん中なのだ。穏やかでおっとりとした性格に、適度に肉のついた柔らかそうな身体。スレンダーとは言えないが、女らしくメリハリの利いた身体付きは小平太の一番好むところである。故に何度かアプローチも掛けているのだが、他の女子とは違い、彼女は一向に小平太へ打ち解けようとはしてくれなかった。
「相変わらず冷たいねえ」
「そんなことは。どなたにも同じ対応をしていると思いますけれど」
「同じ対応じゃ嫌なの。ね、不破は別に付き合ってる奴居ないんだろ? 俺なんてどう? 決して損はさせないからさ」
 しかし、小平太の熱心な言葉にも彼女は薄く笑うばかり。しかし、先程の笑みとは違い、その瞳は決して笑っていなかった。
「……生憎と、損得勘定で恋愛をするほど、器用に生まれ付かなかったものですから。それに――それに、先輩には、もっとお似合いの女性がいらっしゃるはずですよ」
「またそうやって逃げる」
「逃げてなど。事実を申し上げているだけです」
 雷の脳裏には、彼と前の世で仲睦まじく並んでいたひとりの女性の姿がある。
 既に再会している彼女に、今の状況など伝えられるわけがない。小平太と再会したことも雷は伝えきれなかった。余りにも辛く悲しい事実を、知らせたくなかったのだ。
 雷の前の伴侶にも記憶がなかったように、小平太にもまた前の記憶はない。その事実を知った時、雷は「そんなまさか」と思ったものだ。あんなに愛し合っていた二人の絆が簡単に切れるはずもない、と。
 けれど、長次に尋ねればやはりその「まさか」で、雷は己を慕ってくれる後輩に何と言えば良いのか分からなかった。しかも、記憶のない当人がただ性格と身体付きが好みだという理由だけで己にアプローチを掛けているなど、誰が伝えられよう。馬鹿馬鹿しくて反吐が出る。何度殴り付けて目を覚ませと怒鳴り付けたかったことか、と雷はこっそり溜め息を吐いた。
 しかし、そんなことを考えている間にも小平太は雷に迫っていたらしく、彼女の肩を抱いてにこにこと笑っていた。
(――あんなに愛し合っていたのに。これは、私の罪だろうか)
 前の世で、雷はひとつだけ彼に対して罪を犯した。もし、その罪さえなければ、彼は記憶があって、今頃愛しい女性と寄り添い合っていたのだろうか。
 そんな考えを頭から振り払い、雷は己の肩に乗る手をやんわりと払った。同時に彼の目を真っ直ぐに見詰めて、言葉に力を乗せて告げる。
「私の、相手は――貴方ではありません」
 失礼します、と続けて雷はその場を離れた。正直なところ、もう耐えられなかったのだ。
 はじめに絡まれた時、長次に堪えてくれと頼まれなければその場で引っ叩いていただろう。それほどまでに彼の行動は雷にとって許せないものだった。まるで無用の想いを向けられているからではない、覚えていないと言っても、〈彼女〉の存在を蔑ろにするような小平太の行動に腹が据えかねていたのだ。
(――それに、私にも)
 自分が使う校舎に戻ってくれば、同じクラスの竹谷に用事があったのだろう、普段は階の違う自分たちの教室まで現れることはない鉢屋 三郎の姿があった。雷は彼に声を掛けることはせず、ただ目を伏せて波立つ感情を抑えると、どこかつまらなそうな表情で席に座っている久々知 兵(へい)の傍へ歩み寄った。
「遅かったな。また迷ってたのか?」
「ん、そんなところ」
「――お前は相変わらず、嘘を吐くのが下手だな」
「そう? ……でも、騙された振りをしておいてよ。辛くなるから」
「……あの人もなあ……覚えてさえいりゃ、あんなことは絶対しないんだろうが」
「仕方ないなんて言わないでね、兵にも怒っちゃいそうだから」
 兵の前の椅子を引き、雷は冷ややかに笑う。彼女は常こそ穏やかだが、一度その逆鱗に触れるとその怒りは凄まじい。こと三郎と滝夜叉丸――平 滝に関しては、彼女にとって地雷原にも等しかった。
 久々知は知っている。平 滝夜叉丸が不破 雷蔵を支えるためにどれだけ尽力したか。そして、彼女を生かすために何をしたのかも。だからこそ、彼女が今の世でも滝に入れ込むのは仕方がないと思っている。
(――記憶がない方が良いのか、悪いのか)
 自分は記憶があるが故に随分と迷い、揺れた。けれど、彼女らの相手は二人とも今は〈ただの人〉である。そして、そのために彼女たちはずっと苦しみ続けている。
(……自分の相手が忘れてることは、二人とも「仕方ない」って言う癖になあ)
 久々知は自分のことより誰かのために怒る彼女たちの性質にどこか呆れたように笑みを向け、せめて良い方向へ皆の関係が向かえば良いと思った。


| SS::記憶の先 | 02:28 | comments (x) | trackback (x) |
再会の初対面(仙文)


「ね、文次ろ――じゃなくて、文子(あやこ)と仙蔵は幼馴染なんでしょ? やっぱり私と留さんみたいに、生まれた時から一緒だったの?」
 放課後、誰も居なくなった教室で口火を切ったのは善法寺 伊緒(いお)――先の世では善法寺 伊作と名乗っていた少女である。その隣には幼馴染であり、先の世では同じく六年同室として彼女と過ごした食満 留三郎がおり、彼は興味深そうに眉を上げた。更にその隣で本を読んでいる中在家 長次も気になるのか、ちらりと視線を二人に向ける。彼らの間で唯一記憶のない七松 小平太は、今日も帰りの学活が終わった瞬間に部活へと飛び出して行ったのでここにはいない。そして、今の彼らにはその方が好都合だった。
 文子は伊緒の問いに肩を竦め、仙蔵を見遣る。彼はその問いに答える気がないのか、ちらりと視線を文子へ向けると窓の外へと視線を逸らした。仕方がないので溜め息ひとつで文子は伊緒たちに向き直り、口を開く。
「俺たちは三歳の時に新しくできた一軒家のほら、何て言うんだ、三、四件まとまって作られてるようなああいうやつ、あれにお互いの家が引っ越して隣同士になったんだ。同い年の子ども連れて隣の家の奥さんが挨拶に来たってんで出たら、仙蔵なんだもんな」
 ありゃ驚いたぞ、と呟きながら、文子は笑う。あの時はまだ三つで今と昔の区別もついていないくらいだったが、仙蔵の顔を見てすぐに彼だと分かった。あれはある意味においては運命的な出会いだったのだろう。――素直に喜ぶには余りにも癪に障るものであるが。
「私だって驚いたに決まっておろう。何せ、見飽きた顔が幼子になってまたあるんだからな」
 仙蔵は文子に合わせるように呟いたが、その話をするには余り気が向かないらしく、しきりに視線を外へ向けていた。それに気付いた伊緒が指摘すると、今度は文子が堪え切れない、とばかりに吹き出した。肩を震わせて笑う文子に仙蔵が珍しく嫌そうな顔で彼女を小突く。勿論、その反応に食い付かない伊緒と留三郎ではない、彼らは文子に興味津津といった様子で水を向けた。
「いやあ、あの時は驚いた。――こいつ、俺が女に生まれたこと信じられなかったみてえでさ、スカート穿いてんにも関わらず、まず最初にしたことが挨拶でも再会を喜ぶでもなくて、股間触って性別確かめることだもんな」
 仙蔵が親にあんなに怒られてるの見たの、あれが最初で最後だった、と付け加えた文子は、にやにやと珍しくからかいに満ちた視線を仙蔵に向けた。普段は彼女が遊ばれる側であるのだが、今だけは正反対だ。本来ならば仙蔵がまずその立ち位置を許さないのだが、このことだけは彼に分が悪く、仙蔵は幾分か子どもっぽく髪の毛を揺らして視線を逸らした。その二人の様子にそれが真実だと分かり、伊緒と留三郎は耐えきれないという風に吹き出して笑い転げる。唯一、長次だけが「分からないでもない」と呟いた。
「何だ長次、お前俺が女に見えねえってのか」
「そうじゃない。……だけど、確かめたい気持ちは分かる。前と同じかどうか」
 それは、幼馴染の記憶がなかった長次の言葉だからこそ深く聞こえた。彼は多分、何度も小平太に確かめたかっただろう。けれど、確かめようとしても届かなかった。それを知っている四人は、彼の言葉に何も言えなかった。
「――仕方があるまい。私だって文次郎が女に生まれるとは思わなかったんだ。私が女に生まれるならまだ分からんでもないが、まさか文次郎が女になるとは……」
「まあ、確かになあ。俺も途中で『あれ? 俺なんで女なんだろうな』とは思ったし。伊緒――伊作はなかったか、そういうの。違和感ってのも何か違えんだけどさ、ちょっと引っかかる、みたいな」
 伊緒と留三郎はその言葉にちらりとお互いを見かわした。それは彼らだけが知る秘密だが、今更明かすこともなかろう、と視線で応じ合う。伊緒は文子の問いにただ曖昧に笑い、「私はそうでもなかったよ」とだけ告げた。
「そうか。まあ、伊作はちょっと女っぽいところあったもんな。優男と言うか。――あ、けなしてるわけじゃないからな。
 まあ、逆に言って、あれだけ男くさかった俺が女に生まれたことの方が不思議なんだけどよ。つーか、何で他の奴らは皆男で生まれてんのに、俺と伊緒だけ女になっちまったんだろうな?」
「さあ……神様の思し召し、ってやつじゃない? 私たちの場合は、神様って言うよりも仏様かもしれないけど」
「違いねえ」
 文子の言葉に伊緒が応え、更に留三郎が応じた。文子はその答えにただ頭を掻き、溜め息を吐く。そして立ち上がると、まだふてた様子の仙蔵に声をかけた。
「おい仙蔵、もう帰ろうぜ。そろそろ買い物いかねえと」
「ああ、そうか、もうそんな時間か」
 くるりと仙蔵の方へ向いた瞬間になびいた文子の髪は、以前と比べて長く柔らかい。後姿を見るにつけても、文子が女であることは疑いようもなかった。その背中を見ていた伊緒と留三郎は、細い背中に昔見た大きな背中を重ねて眼を細める。けれど、不思議と今の文子と文次郎を重ねても違和感はもう起こらず、いつでもピンと伸びた背筋だけが彼女を彼たらしめていた。
「何、今日は文子がご飯作るの?」
「家も仙蔵ん家も親居ねえんだよ。だから、二人で飯作って食っとけだと」
「へえ、大変だあ」
「ああ、面倒臭えったらありゃしねえ。――じゃ、悪いが、俺たちは先帰るわ。長次、あんまりしょげてんなよ」
 ひとりだけ、一番縁深かった人間の記憶が失われていた長次に軽く声をかけ、文子は荷物を持って歩き出す。その背中を追って仙蔵も同じく歩き出し、いかにも仲睦まじい様子で二つの背中は遠ざかって行った。

「……仙蔵じゃなくて、文子が女で良かったのかもねえ」
「ん? 何で」
 その背中を見送った後、しんと静まり返った教室に伊緒の声が響く。それに応えるように留三郎が視線を向けると、伊緒は困ったように笑った。
「だって、どう考えたって仙蔵が女だったら、あの二人かち合うでしょ。文子が女の子になった分、ちょっとだけ性格が優しくなってるから、上手く釣り合いが取れてる気がする。仙蔵が仙子だったら、多分文次は尻に敷かれてたね。今だって亭主関白っぽいけどさ」
「あー……まあ、確かになあ」
「……仙蔵を、受け入れられる状態になっただけだろう」
 聞くともなしに二人の話を聞いていた長次が、小さく囁いた。その言葉に二人が視線を向けると、彼は本から視線を上げて口を開く。
「文次郎は、何だかんだ言って仙蔵に甘い。アレが女になったことで、上手くお互いの位置が決まった、それだけだろう」
「甘いって言うか……まあ、そうなのかなあ。でも、仙蔵だって何だかんだ言って、今の文子には甘いよね。ま、結局はお似合いってことなのかな。六年一緒に過ごして、その後も相棒だったんだもんね。お互い気心知れてるって点では、今居る他の誰よりも近い存在だしね」
 その中の誰ひとりとして二人が伴侶となることを疑っていないところは不思議だが、そう思わせる空気が今の二人にはあった。甘くもなく辛くもなく、ただお互いが傍に居ることが当たり前であるとする、そんな空気が。
 そんな二人の間柄に、伊緒と留三郎が視線を交わし合う。その二人の会話をただひとり聞いていた長次は、それはお前ら二人も一緒である、という突っ込みを心の中でひっそりと落とした。


| SS::記憶の先 | 02:27 | comments (x) | trackback (x) |
懐かしい声(タカくく)

「はい」
「……あの、久々知先輩、ですか?」
 久々知 兵(へい)は突然携帯を震わせた見慣れぬ番号に一度顔をしかめ、その後にあることを思い出して通話を始めた。数秒沈黙を返す相手に悪戯か? と苛立ちを覚えたものの、その後におずおずと問いかける声にその怒りを鎮める。
「斉藤 タカ丸か、早かったな」
「あ、良かった……掛ける時も本当に先輩に繋がるかどうか不安で、本当にドキドキしてたんだあ……! ああ、本当に夢じゃなくて良かったあ」
「大げさだな、お前は。――つっても、その様子だとお前の傍には誰も居ないんだな」
 兵は携帯電話の向こうで大きく息を吐く(この様子だと実際に胸を撫で下ろしているだろう)タカ丸に苦笑し、その後に小さく呟く。それにタカ丸が困ったように笑い声を立てた。
「うん、淋しかった。――前の記憶があっても、それを共有してくれる人が誰も居ないんだもん。父さんは全然覚えてないし、周りにも誰も居ないしでさ。だから、今日先輩たちと会えて、本当に嬉しかったんだあ」
「そうか……。じゃあ、今度他の奴らとも引き合わせてやるよ。――滝……平 滝夜叉丸や綾部 喜八郎、田村 三木ヱ門は覚えているんだろう? それから一学年下だった三之助や左門たちも。中には記憶がない奴も居るが、大体近い年齢の奴らは揃って来たんだ」
「え!? 滝夜叉丸や三木ヱ門たちも居るの!?」
 耳に響くような大声を聞いて兵は一度携帯電話を耳から離したが、その興奮の理由も分かるので怒らずに話を続ける。
「ああ。生憎と藤内と竹谷には記憶がなかったが……他の人間は大体覚えているよ。ただ、俺も含め、性別が入れ替わってるやつも多いけどな」
 兵はそう言いながら己の身体を見下ろした。以前の鍛え抜かれた体躯とは違い、ふっくらと丸みを帯びている。それに嫌悪も違和感も覚えてはいないが、周囲はそうも思えないらしく、時折困惑されもした。――そう言えば、この男だけは驚いても態度は変わらなかったな、と兵は何となくタカ丸らしさを感じて笑った。
「え、女の子になってる子が居るってこと?」
「だな。えーと、今女なのは分かってるだけでも、滝夜叉丸、喜八郎、雷、俺、孫兵、左門、伊助、四郎兵衛、金吾、きり丸……ってとこか。ひとつ上だった立花先輩方にはお会いしていないから、どうなっているのかはよく分からない」
「うっひゃあああ……結構性別が逆転してるんだあ。じゃあ、逆に俺みたいに前と同じに生まれてきた方が珍しいのかな?」
「さあ、そうでもないだろ。どっちかと言うと、記憶がある方が珍しいんじゃないか?」
「ああー、それもそうだね!」
 タカ丸が同意する声を聞いて、兵は暢気なのか大物なのかと判断に困った。けれど、この能天気さは昔からだ。生まれ変わっても余り変わり映えのしない男に呆れつつ、どこか安堵した兵は柔らかい声で続けた。
「この番号、登録してしまって良いだろ? 後で私のアドレスにメールアドレスを送ってくれ。滝たちと連絡を付けて、早いうちに場を設けるから」
「本当!? 有り難う、先輩! 俺、すっごい楽しみにしてる! 先輩、大好き!」
「アホ。――じゃあ、そろそろ切るな。何かあったらメールで連絡するから、早めにアドレス寄越せよ」
「分かった! すぐに送るね! ……じゃあ、先輩またね。おやすみなさい」
「ああ、お休み。また今度な」
「……うん、また今度!」
 兵は分かりやすい奴だ、と思いながら通話を切った。――繋がりを消したくなかったのだろう。今まで孤独だった、という話を聞けば、それも頷ける。かと言って、その情にほだされて通話をずるずると続ければ、学生の身には大き過ぎる携帯電話の使用料という結果がついてきてしまうのだ。さほど懐が温かくない兵は「許せ、斉藤」と呟きながら、携帯電話を枕元へ放り投げた。
(明日の通学中に滝たちと連絡を取ろう。あいつは動きが速いから、すぐに他の人間を集めてくれるはずだ。記憶のない藤内と竹谷は省くにしても、それなりに人間は集まりそうだな……)
 きっと喜ぶだろう、と兵は今日の昼に見たあの変わらない笑顔を思い浮かべて、表情を幾分か緩めた。彼にとっては馴染み深い後輩だ、年上ということで扱いづらいこともあったが、性格があの通りである所為か、前も何とか上手くやっていけていた。
(――会えて良かった)
 兵は素直にそう思い、明日の準備をするべく重い腰を上げたのだった。


| SS::記憶の先 | 02:26 | comments (x) | trackback (x) |
縁の糸(タカくく)

「――有り難うございました、またお願いしますね」
 斉藤 タカ丸は美容室を出て行く客を笑顔で見送った。自分の家が経営する美容室が評判になって長いことになるが、息子とは言え下っ端のタカ丸が許されるのはまだほんの僅かなこと。専門学校に通いながら家業の手伝いをするのは既に慣れっこだが、〈昔〉の記憶があると少しばかりうんざりする気持ちにもなる。特に、自分で既に独り立ちした記憶があるのだから、尚更。
 それでもこの世に生まれてから十数年にしかならぬ自分である、そんな記憶を振りかざしたところで意味がない。第一、自分の父ですら息子に「前世の記憶がある」ということに半信半疑なわけだから、他の人間など推して知るべし、である。
(――せめて、誰か他の人に会えたら良かったんだけど)
 胸中で溜め息を吐くも、彼とて自分がいかにおかしいことを言っているかは分かっている。例え、過去の友人たちに似ている人間を見つけたとしても、それは彼らではないのだ。自分だけが覚えていることに寂しさを感じながらも、タカ丸は新しい人生を生きる決意を固めていた。――はず、だったのだが。
「……嘘っ!」
 街の雑踏に見覚えのある横顔を見つけて、彼は仕事も放り出して思わず駆け出していた。普段は賑やかだとしか感じない人ごみも今は邪魔くさく感じる。とにかく人を押し分け掻き分け、彼は道端を行くひとりの人物の腕を取った。
「久々知先輩っ!」
「へっ!? ……ああっ!? おま、お前、斉藤、斉藤 タカ丸かあっ!?」
 掴んだ腕を引き寄せると、自分の目元ほどにある小さな頭が振り返った。初めは不審げだった瞳が驚きに見開かれる。その瞳に浮かぶ光は見知らぬ誰かを警戒するものではなく、よく見知った人間を見つけた時のものだった。
「嘘、本当に久々知先輩だあ! やったあ、すげえ嬉しい! 俺ね、俺だけだと思ってた! 本当に本当に本当に久々知先輩なんだあ! やったー!」
 驚いて不躾に自分を指差す(もっとも、普段ならこの人物もこんなことは決してしないだろう)久々知をタカ丸は喜びの余り抱き締めた。その時、初めて違和感に気付く。髪の長さや雰囲気は自分が記憶するそのままなのだが、身体の細さや柔らかさ、肌や髪から薫る甘い香りが彼に久々知の変化を教えていた。
「ちょ、放せよ、斉藤!」
「……あれ、嘘、ちょっと待って! ……先輩、女の子、なの? もしかして」
「もしかしなくてもそうだよ、悪かったな女に生まれてて! 因みに隣に居る雷蔵も女に生まれてるからな」
 抱き付いたタカ丸を力ずくで引き離しつつ、久々知 兵助――現在の久々知 兵(へい)は、自分の傍らで苦笑を洩らしている不破 雷(らい)を示した。タカ丸が視線を向けると、同じく室町時代の面影を残しつつも、見事に〈女の子〉として立っている不破 雷蔵の姿が。軽く手を挙げる彼女に、タカ丸は驚きで目を見開いた。
「お久し振りですね、と申し上げるべきでしょうか。お会いできて嬉しいですよ、タカ丸さん」
「雷蔵君……も、覚えてるんだ! うわあ、本当に嬉しいよ! 久し振り! 本当に久し振り!」
「今は不破 雷と言います。兵助は久々知 兵。――ところでタカ丸さん、あちらでお怒りなのはお父君なのでは? 物凄い目でこちらを睨んでいらっしゃいますけど……」
 感極まって雷の手を掴んで上下に振り回すタカ丸に、雷は苦笑で応えた。ついでに彼の背中に鋭い視線を向け続ける男を示し、彼の興奮を冷ましてやる。その効果は覿面(てきめん)で、タカ丸は一瞬にして顔から血の気を失せさせた。
「あ、しまった、仕事の途中だったんだ……! ああ、でもどうしよう、先輩たちと折角会えたのに!」
 おろおろと父と兵たちを見るタカ丸に兵が深い溜め息を吐いた。彼女は手慣れた手付きで携帯電話を取り出し、タカ丸につき付けた。
「これ、私の携帯なんだけど。斉藤、お前の会社どこ? 持ってるんだろ?」
「持ってる! 同じです! あ、えっとじゃあ」
「赤外線送るから受信しろ。仕事終わったら連絡くれ」
「え、あ、うん、分かった。あ、でも俺の連絡先も……」
 ぽちぽちと赤外線の送信操作を行う兵につられて、タカ丸も己の携帯をポケットから取り出す。赤外線を受信してから、彼は同じ操作を繰り返そうとした。けれど、それを兵が止める。
「仕事中なんだろ、仕事に戻れよ。これで私にはいつでも連絡が付くんだから、後でメールでもくれれば良いさ。――生まれ変わっても髪結いやってるなんて、本当に好きなんだろ? 仕事はきっちりしろよな。私は連絡待ってるからさ」
「先輩……! する、必ず夜にするからっ! 先輩、待っててねっ!」
「りょーかい。ほれ、とっとと仕事に戻れよ。私も雷と買い物の途中なんだ、もう行くぞ」
「絶対するから! またね、先輩!」
「はいはい」
 子どものように兵の連絡先が入った携帯を抱えて、タカ丸は遠ざかって行く彼女の背中へ声を張り上げて手を振った。後ろからはとうとう痺れを切らして自分に歩み寄る父の姿。それでもタカ丸は雑踏に消えていく小さな背中から目を離すことができなかった。

「……凄い偶然だね、びっくりしちゃった。あんなこともあるんだねえ」
「本当だよ。突然腕掴まれた時は何事かと思った。あいつじゃなけりゃふっ飛ばしてたな」
 掴まれた腕をさする兵に雷がくつりと笑った。その笑みは普段と変わらぬ穏やかなもので、本当にタカ丸と再会できたことを喜んでいるようだ。それに兵は少しだけの罪悪感を押し隠して、溜め息を吐く。
「あいつ、室町から全然変わってなかったな。……あれで今も私より年上だったら、どうしよう」
「外見からすると年上じゃないかなあ。背も高かったし。昔も高い方だったけど、やっぱり今の時代だと本当に長身が映えるよねえ。昔も今も端正な顔立ちだしさ、この顔立ちとしては羨ましいくらい」
「雷は雷の良さがあるから良いんだよ。――早く、会えると良いな」
「うん。でも、兵にも会えたし、タカ丸さんにも会えた。少しずつ再会できているんだもの、そのうちきっと逢えるよ。大丈夫だから、心配しないで」
「……うん、だな。第一、あの雷蔵大好きな雷蔵馬鹿が、会いに来ないわけないもんな。きっと、あいつも血眼になってお前のこと捜してんだろうな」
「さあ、どうかなあ。……でも、そうだと良いな」
 雷蔵の透明な笑みに、兵助は口が滑ったと己を悔やむ。こういう時、己の考えの足りなさが嫌になった。一度生まれ変わっても、こういう少し不器用なところは直らないらしい。性別まで変えたのだから、こういったところも直してくれたら良いのに、と兵は見たこともない神に恨み事を述べた。
 そんな兵の考えなどお見通しのようで、雷はくすくすと笑みを零す。少しだけ悪戯っぽい笑みを浮かべて、彼女は「えい」と兵の腕へ己の腕を組んだ。そして、とびきりの笑みで彼女へ告げる。
「買い物、付き合ってくれるんでしょう? 迷っちゃうから、兵がちゃんとアドバイスしてよね!」
「――そのために付き合わせたんだろ? この私が雷にぴったりのを選んでやるよ」
「頼りにしてます、兵ちゃん」
 二人で顔を突き合わせて笑って、兵と雷は再び歩き出す。その様子は本当に仲の良い女の子同士であり、過去に血腥(ちなまぐさ)い時代を生き抜いてきた記憶があるなどとは露ほども感じさせなかった。


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