2011,08,30, Tuesday
「まあ、大きなお魚!」
カメ子は今し方釣り上げられた魚を見て目を丸くした。それに気を良くしたらしい青年が笑う。
「カメちゃん、触ってみる?」
幾分砕けた物言いをされるようになったのは、こうして彼らと過ごす時間が増えたからだろうか。忙しい父の名代、とは名ばかりの幼い自分をこうして尊重し、また可愛がってくれる彼らをカメ子は大好きであった。
「よろしいのですか?」
「良いよ、はい」
差し出された魚に恐る恐る手を伸ばす。濡れた身体はカメ子の指先が触れると同時にひどくばたついた。魚が跳ねるたびに残っていた水しぶきが彼女の顔に降りかかる。咄嗟に顔を背けたものの、降り注いだ水のつぶては容赦なくカメ子をなぶった。
「わわっ、大丈夫!?」
「こらっ、何しているんだ! カメ子さん、大丈夫ですか?」
慌てて魚を引き寄せる青年の声にかぶさるように、聞き慣れた低い声が降ってくる。さらに温かく大きな手のひらが自分の身体を後ろへ引き寄せた。
「ああ、こんなに濡れてしまって……馬鹿野郎、カメ子さんに何てことをするんだ!」
目の前の青年を怒鳴りつける男――鬼蜘蛛丸に、カメ子は慌ててかぶりを振った。己を守るように抱える腕に手を添え、そうではないのだと言い募る。
「鬼蜘蛛丸さま、お怒りにならないでください。わたくしが触りたかったのです」
それは事実だ。――きらきらと日に輝く魚に、触れてみたかった。思った以上に活きが良くて驚いたが。
鬼蜘蛛丸がカメ子の言葉をどう取ったのかは分からないが、彼は深い溜息をひとつついたあとに懐から手拭いを取り出した。少ししわくちゃのそれに鬼蜘蛛丸はバツの悪そうな顔をしたが、小さく「綺麗ですから」と呟いてそれでカメ子の顔を拭った。
「これで大丈夫だと思いますが……魚なんてそう珍しいものでもないでしょうに」
「ええ、そうですわね。ですが、こうして今釣れたばかりのお魚を間近に見るのは初めてだったものですから。普段目にするのはもう売られているものばかりですもの」
カメ子のその言葉に鬼蜘蛛丸は少しだけ目を見張り、そのあとに表情を和らげた。少し考えたあとに口を開く。
「まだ、堺の港に着くまで少し時間があります。……もし宜しければ、カメ子さんも釣りをしてみますか? 私がお教えしましょう」
「まあ、本当ですの!? 嬉しい、わたくし是非やってみたいです! 鬼蜘蛛丸さま、ありがとうございます!」
鬼蜘蛛丸の言葉にカメ子の表情がパッと明るくなる。それに鬼蜘蛛丸もまた常になく柔らかな笑みを浮かべ、彼女をその膝に招いた。――それを周囲の人間が呆れた顔で見ていることに気づかないまま。
カメ子は今し方釣り上げられた魚を見て目を丸くした。それに気を良くしたらしい青年が笑う。
「カメちゃん、触ってみる?」
幾分砕けた物言いをされるようになったのは、こうして彼らと過ごす時間が増えたからだろうか。忙しい父の名代、とは名ばかりの幼い自分をこうして尊重し、また可愛がってくれる彼らをカメ子は大好きであった。
「よろしいのですか?」
「良いよ、はい」
差し出された魚に恐る恐る手を伸ばす。濡れた身体はカメ子の指先が触れると同時にひどくばたついた。魚が跳ねるたびに残っていた水しぶきが彼女の顔に降りかかる。咄嗟に顔を背けたものの、降り注いだ水のつぶては容赦なくカメ子をなぶった。
「わわっ、大丈夫!?」
「こらっ、何しているんだ! カメ子さん、大丈夫ですか?」
慌てて魚を引き寄せる青年の声にかぶさるように、聞き慣れた低い声が降ってくる。さらに温かく大きな手のひらが自分の身体を後ろへ引き寄せた。
「ああ、こんなに濡れてしまって……馬鹿野郎、カメ子さんに何てことをするんだ!」
目の前の青年を怒鳴りつける男――鬼蜘蛛丸に、カメ子は慌ててかぶりを振った。己を守るように抱える腕に手を添え、そうではないのだと言い募る。
「鬼蜘蛛丸さま、お怒りにならないでください。わたくしが触りたかったのです」
それは事実だ。――きらきらと日に輝く魚に、触れてみたかった。思った以上に活きが良くて驚いたが。
鬼蜘蛛丸がカメ子の言葉をどう取ったのかは分からないが、彼は深い溜息をひとつついたあとに懐から手拭いを取り出した。少ししわくちゃのそれに鬼蜘蛛丸はバツの悪そうな顔をしたが、小さく「綺麗ですから」と呟いてそれでカメ子の顔を拭った。
「これで大丈夫だと思いますが……魚なんてそう珍しいものでもないでしょうに」
「ええ、そうですわね。ですが、こうして今釣れたばかりのお魚を間近に見るのは初めてだったものですから。普段目にするのはもう売られているものばかりですもの」
カメ子のその言葉に鬼蜘蛛丸は少しだけ目を見張り、そのあとに表情を和らげた。少し考えたあとに口を開く。
「まだ、堺の港に着くまで少し時間があります。……もし宜しければ、カメ子さんも釣りをしてみますか? 私がお教えしましょう」
「まあ、本当ですの!? 嬉しい、わたくし是非やってみたいです! 鬼蜘蛛丸さま、ありがとうございます!」
鬼蜘蛛丸の言葉にカメ子の表情がパッと明るくなる。それに鬼蜘蛛丸もまた常になく柔らかな笑みを浮かべ、彼女をその膝に招いた。――それを周囲の人間が呆れた顔で見ていることに気づかないまま。
| SS | 06:48 | comments (x) | trackback (x) |
2011,08,29, Monday
土日は断捨離を決行していた緋緒です、こんばんは。服とか大分捨てた。貧弱なワードローブ(?)がさらに貧弱になった。レベルが1下がった!
そんな感じで、早速土日空きましたね。正確に言えば、断捨離とオフの原稿に夢中で忘れてた。オフの原稿は全然進んでません。竹谷がイケメンすぎて……正視できない……!(嘘おっしゃい) いやでも竹谷がイケメンなのはガチだと思います。心も面もイケてるなんてどういうことなの……!? つか、真面目な話、竹谷と孫兵はわたしのなかで煩悩が浄化されるCPです。こへ滝なら泥まみれなんだけどな☆
まあ、そんな感じです。テンション高いね……これきっとまた何かのタイミングで読み返すことになったらめっちゃダメージ喰らうんだと思います。orz
そういえば、お題で初めて会計を書きました。割と今のところCPより全年齢向けごちゃごちゃが多いかな、という感じです。尻尾巻いて逃げるとか難易度高くてドクタケしか思い浮かばなかったんですが、昨今のドクタケイメージがミュの「ん〜ドクタケェ〜」なので、アニメドクタケが思い出せなくて困りました。ので、脳内イメージが微妙にミュとアニメと混じってる気がします。
CPも書きたいのですが、お題次第です。でも、今までオールキャラというか、こういったCPなしの絡みとか話を書いたことがなかったので、これはこれでありかなーと思います。そして、多分これからも土日は空くでしょう……携帯触らないから……。携帯で小説書く練習でもあるので。何かちょっと本末転倒な気はしますが。まあ、空いた時間に小説書く練習です。丸空きの時間には原稿やります。竹孫とタカくくと。忍フェスの新刊は、多分こへ滝♀合同誌、竹孫オフ1冊、タカくくコピー1冊、とノベルティで栞、が作れればいいなーと思ってます。ちょっとお知恵を拝借したので、栞には書けたらQRコードを三個くっつけて、新刊の番外編か何かを書けたら書いてそのURLが載せられたらいいな、と思います。で、裏面に手打ち用URLとか載せられたら携帯でバーコード読めない人とかPCで読みたい人用で完璧じゃね、って思ったんですが、それ以前の話としてわたしまず三本もSSかけるのかな、って話ですね。頑張ります。(`・ω・´)
もうすぐ九月ですしね、そろそろ本当に本気出さないとね! と思ってます。頑張る!
そんな感じで、早速土日空きましたね。正確に言えば、断捨離とオフの原稿に夢中で忘れてた。オフの原稿は全然進んでません。竹谷がイケメンすぎて……正視できない……!(嘘おっしゃい) いやでも竹谷がイケメンなのはガチだと思います。心も面もイケてるなんてどういうことなの……!? つか、真面目な話、竹谷と孫兵はわたしのなかで煩悩が浄化されるCPです。こへ滝なら泥まみれなんだけどな☆
まあ、そんな感じです。テンション高いね……これきっとまた何かのタイミングで読み返すことになったらめっちゃダメージ喰らうんだと思います。orz
そういえば、お題で初めて会計を書きました。割と今のところCPより全年齢向けごちゃごちゃが多いかな、という感じです。尻尾巻いて逃げるとか難易度高くてドクタケしか思い浮かばなかったんですが、昨今のドクタケイメージがミュの「ん〜ドクタケェ〜」なので、アニメドクタケが思い出せなくて困りました。ので、脳内イメージが微妙にミュとアニメと混じってる気がします。
CPも書きたいのですが、お題次第です。でも、今までオールキャラというか、こういったCPなしの絡みとか話を書いたことがなかったので、これはこれでありかなーと思います。そして、多分これからも土日は空くでしょう……携帯触らないから……。携帯で小説書く練習でもあるので。何かちょっと本末転倒な気はしますが。まあ、空いた時間に小説書く練習です。丸空きの時間には原稿やります。竹孫とタカくくと。忍フェスの新刊は、多分こへ滝♀合同誌、竹孫オフ1冊、タカくくコピー1冊、とノベルティで栞、が作れればいいなーと思ってます。ちょっとお知恵を拝借したので、栞には書けたらQRコードを三個くっつけて、新刊の番外編か何かを書けたら書いてそのURLが載せられたらいいな、と思います。で、裏面に手打ち用URLとか載せられたら携帯でバーコード読めない人とかPCで読みたい人用で完璧じゃね、って思ったんですが、それ以前の話としてわたしまず三本もSSかけるのかな、って話ですね。頑張ります。(`・ω・´)
もうすぐ九月ですしね、そろそろ本当に本気出さないとね! と思ってます。頑張る!
| 戯言 | 21:39 | comments (x) | trackback (x) |
2011,08,27, Saturday
「忍術学園めぇ……!」
ドクタケ忍者隊首領稗田八宝菜が忌ま忌ましげに呟いた。この度も彼らが考えに考え抜いた計画を、一年は組の良い子たちおよび忍術学園の面々に目茶苦茶にされたのだ。せっかく用意した高価な火器も、火薬も、これで全てがパアだ。その悔しさに歯ぎしりするも、今となっては後の祭り。さらに言えば、自分たちの身すら危うい状況である。
それを見て取った八宝菜は、すぐさま傍の部下たちに声を張り上げた。
「ドクタケ忍者隊、全員退却! 今日のところは 退いてやるぞ、忍術学園の諸君!」
「退いてやるんじゃなくて、負けたんだろ?」
一年は組のなかでもとりわけ口の悪いきり丸が憎まれ口を叩いたが、それは無視する。同時に懐から取り出した煙玉に火を点け、地面へと投げつけた。導火線が尽きたそれは八宝菜の望み通りにもくもくと周囲へ白い煙を立ち込めさせ、彼らの姿を隠してくれる。その混乱に乗じて、八宝菜は部下たちとともに一目散に駆け出した。
「お頭ぁ、おれたちまた負けたんですね」
「黙れ黙れぇ! 負けたのではない、状況を立て直すために一時退却するのだ!」
「それって結局負けたってことじゃ……」
「違ぁーう! 全然違う! しかし、今はとにかく退くのだあー!」
実際の状況としては、まさしく「尻尾を巻いて逃げた」わけだが、ドクタケ忍者隊首領として、それを認めるわけにはいかない。そのため、八宝菜は泣き言を漏らす部下たちを叱咤することで、己の胸に生まれる忸怩たる気持ちに見ない振りをしたのであった。
ドクタケ忍者隊首領稗田八宝菜が忌ま忌ましげに呟いた。この度も彼らが考えに考え抜いた計画を、一年は組の良い子たちおよび忍術学園の面々に目茶苦茶にされたのだ。せっかく用意した高価な火器も、火薬も、これで全てがパアだ。その悔しさに歯ぎしりするも、今となっては後の祭り。さらに言えば、自分たちの身すら危うい状況である。
それを見て取った八宝菜は、すぐさま傍の部下たちに声を張り上げた。
「ドクタケ忍者隊、全員退却! 今日のところは 退いてやるぞ、忍術学園の諸君!」
「退いてやるんじゃなくて、負けたんだろ?」
一年は組のなかでもとりわけ口の悪いきり丸が憎まれ口を叩いたが、それは無視する。同時に懐から取り出した煙玉に火を点け、地面へと投げつけた。導火線が尽きたそれは八宝菜の望み通りにもくもくと周囲へ白い煙を立ち込めさせ、彼らの姿を隠してくれる。その混乱に乗じて、八宝菜は部下たちとともに一目散に駆け出した。
「お頭ぁ、おれたちまた負けたんですね」
「黙れ黙れぇ! 負けたのではない、状況を立て直すために一時退却するのだ!」
「それって結局負けたってことじゃ……」
「違ぁーう! 全然違う! しかし、今はとにかく退くのだあー!」
実際の状況としては、まさしく「尻尾を巻いて逃げた」わけだが、ドクタケ忍者隊首領として、それを認めるわけにはいかない。そのため、八宝菜は泣き言を漏らす部下たちを叱咤することで、己の胸に生まれる忸怩たる気持ちに見ない振りをしたのであった。
| SS::1000のお題集 | 20:51 | comments (x) | trackback (x) |
2011,08,26, Friday
「やり直し」
はっきりと告げられた一言に、団蔵は目の前が真っ暗になるかと思った。いや、事実たたらを踏んだのだから、真っ暗になったのだろう。それは障子の外に広がる闇と同じ色をしていて、今にも団蔵を飲み込んでしまいそうだった。
「団蔵、突っ立っていても帳簿は合わんぞ」
「……はい……」
胸に刺さる言葉だが、これはまだマシなほうだ。場合によっては、いや普段ならば「鍛練が足りん!」と怒鳴りつけられた挙句、委員全員を巻き込んで深夜であろうと構わずそろばん片手に外へ叩き出されるのだから。そうならないだけマシ。そのはずなのに、いつもよりずっと静かに告げられた一言が団蔵には堪えていた。
「団蔵」
背後から静かな声がかかる。目の前の委員長よりも幾分も穏やかなその声は、委員長に次ぐ年長者、四年ろ組の田村三木ヱ門であろう。先程まで流れるように聞こえていた珠を弾く音が聞こえなくなったことから、団蔵は三木ヱ門が手を止めて己を見つめていることに気づいた。
そうだ、早く自分の持ち場に戻って計算をやり直さなくては。そう思うものの、身体が動かない。まるで鉛を流し込まれたように全身が重く、だるかった。
「うっ……」
どうして自分はこんなに悲しくて苦しいのだろう。計算のやり直しを突き付けられるのも、深夜まで委員会活動が続くのもいつものことだ。それなのに、今自分はひどく辛い。それがなぜだか分からないことが尚更団蔵の苛立ちと苦痛を増長させ、涙となって身体の外へと溢れていた。
泣いているバヤイではない。早く自分の席に戻るんだ。――そう思うものの身体は動かず、団蔵は唯一ままになる指先で袴を握り締めた。
そこに響き渡る溜息と、帳簿が閉じられる静かな音。珠を弾く音に満ちているはずの委員会室で、それはやけに大きく響いた。
「今日は終いだ。三木ヱ門、左門と佐吉の面倒を頼む」
「委員長」
「俺はこいつだ」
急に立ち上がった文次郎に団蔵が身体を跳ねさせると、文次郎はもう一度、今度は露骨な溜息をついた。
「気づいてねえのか?」
低い声とともに落ちてくる腕に団蔵は思わず目を閉じる。しかし、降ってくるはずの拳固は、額に添えられる温かい手のひらに変わっていた。
「結構高いな……馬鹿は風邪引かないというもんだが」
話している内容は全くひどいものだが、今の団蔵にはただ額に当てられた手のひらの優しさだけしか分からなかった。ぼうっと腕を辿れば、濃い隈を目元に張りつかせた文次郎の顔に辿り着く。自分を見下ろす視線をじっと見返していると、呆れたような溜息と共に額を押された。
「三木ヱ門、後は頼んだ。――おら、行くぞ」
文次郎は後輩たちにそれぞれ声をかけていた三木ヱ門に一声かけると、それなりに重たいはずの団蔵を軽々と持ち上げ、荷物のように肩へと担ぎ上げる。それに三木ヱ門はただ軽く頷くと、「僕は寝ていない……」と繰り返し寝ぼけて呟いている左門の頭を引っぱたいて起こした。佐吉はその傍らで今にもくっつきそうな瞼を必死で持ち上げるべく、目を何度もこすっている。そんな彼らを確認すると、文次郎はもう一度大きく溜息をつき、団蔵を抱えたまま委員会室を後にした。
団蔵は熱でぼうっとする意識のなか、ゆらゆらと揺れる身体の心地よさに小さく息をついた。――身体が熱くてだるい。けれど、不思議と先程のような不安や苛立ちは感じなかった。睡眠不足も相俟って、眠気が全身に押し寄せてくる。身体の下にある温かさに目を閉じれば、すぐに眠りの波が団蔵を飲み込んでいった。そこにあるのはもはや大きな安心だけだ。吸い寄せられるように己に触れる温かさへしがみついた団蔵は、そのまま全てをその温かさに委ねて眠った。
「……寝やがったな」
己にかかる重さでそれに気づいた文次郎が、小さく呟く。抱えた小さな身体は常よりもずっと熱い。体調の変化に気づかなかった自分の不明をこってりと養護教諭と保健委員長に絞られるのだろう、と想像して、少々気が滅入ったが、今回ばかりは仕方がない、ともう一度溜息をつくことで文次郎は全てを思い切った。
はっきりと告げられた一言に、団蔵は目の前が真っ暗になるかと思った。いや、事実たたらを踏んだのだから、真っ暗になったのだろう。それは障子の外に広がる闇と同じ色をしていて、今にも団蔵を飲み込んでしまいそうだった。
「団蔵、突っ立っていても帳簿は合わんぞ」
「……はい……」
胸に刺さる言葉だが、これはまだマシなほうだ。場合によっては、いや普段ならば「鍛練が足りん!」と怒鳴りつけられた挙句、委員全員を巻き込んで深夜であろうと構わずそろばん片手に外へ叩き出されるのだから。そうならないだけマシ。そのはずなのに、いつもよりずっと静かに告げられた一言が団蔵には堪えていた。
「団蔵」
背後から静かな声がかかる。目の前の委員長よりも幾分も穏やかなその声は、委員長に次ぐ年長者、四年ろ組の田村三木ヱ門であろう。先程まで流れるように聞こえていた珠を弾く音が聞こえなくなったことから、団蔵は三木ヱ門が手を止めて己を見つめていることに気づいた。
そうだ、早く自分の持ち場に戻って計算をやり直さなくては。そう思うものの、身体が動かない。まるで鉛を流し込まれたように全身が重く、だるかった。
「うっ……」
どうして自分はこんなに悲しくて苦しいのだろう。計算のやり直しを突き付けられるのも、深夜まで委員会活動が続くのもいつものことだ。それなのに、今自分はひどく辛い。それがなぜだか分からないことが尚更団蔵の苛立ちと苦痛を増長させ、涙となって身体の外へと溢れていた。
泣いているバヤイではない。早く自分の席に戻るんだ。――そう思うものの身体は動かず、団蔵は唯一ままになる指先で袴を握り締めた。
そこに響き渡る溜息と、帳簿が閉じられる静かな音。珠を弾く音に満ちているはずの委員会室で、それはやけに大きく響いた。
「今日は終いだ。三木ヱ門、左門と佐吉の面倒を頼む」
「委員長」
「俺はこいつだ」
急に立ち上がった文次郎に団蔵が身体を跳ねさせると、文次郎はもう一度、今度は露骨な溜息をついた。
「気づいてねえのか?」
低い声とともに落ちてくる腕に団蔵は思わず目を閉じる。しかし、降ってくるはずの拳固は、額に添えられる温かい手のひらに変わっていた。
「結構高いな……馬鹿は風邪引かないというもんだが」
話している内容は全くひどいものだが、今の団蔵にはただ額に当てられた手のひらの優しさだけしか分からなかった。ぼうっと腕を辿れば、濃い隈を目元に張りつかせた文次郎の顔に辿り着く。自分を見下ろす視線をじっと見返していると、呆れたような溜息と共に額を押された。
「三木ヱ門、後は頼んだ。――おら、行くぞ」
文次郎は後輩たちにそれぞれ声をかけていた三木ヱ門に一声かけると、それなりに重たいはずの団蔵を軽々と持ち上げ、荷物のように肩へと担ぎ上げる。それに三木ヱ門はただ軽く頷くと、「僕は寝ていない……」と繰り返し寝ぼけて呟いている左門の頭を引っぱたいて起こした。佐吉はその傍らで今にもくっつきそうな瞼を必死で持ち上げるべく、目を何度もこすっている。そんな彼らを確認すると、文次郎はもう一度大きく溜息をつき、団蔵を抱えたまま委員会室を後にした。
団蔵は熱でぼうっとする意識のなか、ゆらゆらと揺れる身体の心地よさに小さく息をついた。――身体が熱くてだるい。けれど、不思議と先程のような不安や苛立ちは感じなかった。睡眠不足も相俟って、眠気が全身に押し寄せてくる。身体の下にある温かさに目を閉じれば、すぐに眠りの波が団蔵を飲み込んでいった。そこにあるのはもはや大きな安心だけだ。吸い寄せられるように己に触れる温かさへしがみついた団蔵は、そのまま全てをその温かさに委ねて眠った。
「……寝やがったな」
己にかかる重さでそれに気づいた文次郎が、小さく呟く。抱えた小さな身体は常よりもずっと熱い。体調の変化に気づかなかった自分の不明をこってりと養護教諭と保健委員長に絞られるのだろう、と想像して、少々気が滅入ったが、今回ばかりは仕方がない、ともう一度溜息をつくことで文次郎は全てを思い切った。
| SS::1000のお題集 | 21:28 | comments (x) | trackback (x) |
2011,08,25, Thursday
「目元アップ! 口元アップ! 髷アップ! 今日も素敵な滝夜叉丸!」
決まった、と滝夜叉丸は口の端を持ち上げた。美しく全てに才長けた己には、それに相応しい登場の仕方がある。赤い薔薇を手に屋根から降り立った滝夜叉丸は、その薔薇を天にかざしてもう一度ポーズをとった。
「……滝夜叉丸先輩……」
本来ならばここで拍手喝采が起こるはずが、聞こえたのは同じ委員会の後輩が漏らしたうんざりとした調子の呟きのみ。不審に思って彼が視線を戻せば、そこに集まっていた後輩三人はそれぞれにげんなりとした表情で滝夜叉丸を見つめていた。
「ないわ……」
ぼそりと呟いたのは一つ下の三之助だ。それに滝夜叉丸が鋭い視線を投げれば、彼は露骨に嫌な表情を作る。その生意気な態度に滝夜叉丸が物申そうとしたそのとき、傍の後輩がそれぞれ小さな悲鳴を上げた。驚いて振り返れば、地面に何やら盛り上がりが続いている。もぐらの通った跡のようなそれの原因に滝夜叉丸が気づくよりも早く、彼の目の前に大きな影と土砂が飛び込んできた。
「いけいけどんどーん!」
「ひっ……!」
鼓膜を震わす大きな声に滝夜叉丸は思わず喉を引き攣らせた。彼がそれを目視するより早く、その影は滝夜叉丸の首をその腕に抱え込む。ぐ、と強く彼の喉元を絞め上げる腕に、滝夜叉丸は思わず声を張り上げた。
「七松先輩、変な登場の仕方をしないでくださいっ!」
「何おう!? お前だって随分変な現れ方をしたではないか! それに比べて私なんて地味なものだろう! それよりも、ほら全員で塹壕を掘るぞ! いけいけどんどーん!」
滝夜叉丸の首を腕に入れたまま、小平太はさらに傍に居た金吾を片手で捕まえる。その横にいた四郎兵衛にも声をかけ、呆然とそれを見守っていた三之助にも視線を送る。それだけで彼らは今日の委員会もまた地獄であることを理解し、ただ委員長の告げる活動を遂行するために各々苦無を取り出したのだった。
決まった、と滝夜叉丸は口の端を持ち上げた。美しく全てに才長けた己には、それに相応しい登場の仕方がある。赤い薔薇を手に屋根から降り立った滝夜叉丸は、その薔薇を天にかざしてもう一度ポーズをとった。
「……滝夜叉丸先輩……」
本来ならばここで拍手喝采が起こるはずが、聞こえたのは同じ委員会の後輩が漏らしたうんざりとした調子の呟きのみ。不審に思って彼が視線を戻せば、そこに集まっていた後輩三人はそれぞれにげんなりとした表情で滝夜叉丸を見つめていた。
「ないわ……」
ぼそりと呟いたのは一つ下の三之助だ。それに滝夜叉丸が鋭い視線を投げれば、彼は露骨に嫌な表情を作る。その生意気な態度に滝夜叉丸が物申そうとしたそのとき、傍の後輩がそれぞれ小さな悲鳴を上げた。驚いて振り返れば、地面に何やら盛り上がりが続いている。もぐらの通った跡のようなそれの原因に滝夜叉丸が気づくよりも早く、彼の目の前に大きな影と土砂が飛び込んできた。
「いけいけどんどーん!」
「ひっ……!」
鼓膜を震わす大きな声に滝夜叉丸は思わず喉を引き攣らせた。彼がそれを目視するより早く、その影は滝夜叉丸の首をその腕に抱え込む。ぐ、と強く彼の喉元を絞め上げる腕に、滝夜叉丸は思わず声を張り上げた。
「七松先輩、変な登場の仕方をしないでくださいっ!」
「何おう!? お前だって随分変な現れ方をしたではないか! それに比べて私なんて地味なものだろう! それよりも、ほら全員で塹壕を掘るぞ! いけいけどんどーん!」
滝夜叉丸の首を腕に入れたまま、小平太はさらに傍に居た金吾を片手で捕まえる。その横にいた四郎兵衛にも声をかけ、呆然とそれを見守っていた三之助にも視線を送る。それだけで彼らは今日の委員会もまた地獄であることを理解し、ただ委員長の告げる活動を遂行するために各々苦無を取り出したのだった。
| SS::1000のお題集 | 22:32 | comments (x) | trackback (x) |
2011,08,25, Thursday
最近オフ用の原稿以外の小説をあんまり書いてないし、更新も全然できてないので、リハビリも兼ねて1日1話を目標にSSというか、SSSくらいの話をちまちま書いていきたいと思います。主に帰り時間を利用してぽちぽち携帯で打って、終わらなかったら最後パソコンで仕上げ。リハビリというか、書く習慣を取り戻すことが目的なので、あんまり推敲というか見直しはしません。ので、誤字脱字すみません。先に謝っておきます。本当は推敲までちゃんとやるべきなんだけど、多分それやったら目標達成できないので、とりあえず書くことを優先します。そのうちログを作るくらい溜まったら、HTML化する際にちらっと見直すことにします。
因みにお題を使うんですが、「1000のお題集」です。わたしは本気です。割と。1日1話としても3年かかるんですがね、終わるのにwww まあ、人間やればできなくはない。実際に1回クリアしてるし、だからきっとできるはず。頑張ります。
あ、因みに書くものは本当にバラバラです。
今までネタ入れにぶっ込んできたアレソレや、連載終わった室町とか平安とかも入るかもしれません。お題に寄ります。また、全く新規の設定で現パロだったり別パロだったりもするかもしれません。アニメ準拠、原作準拠それも様々です。たまには女体化じゃないのも書きます。全てはお題次第です(大切なことなので二回言った)。もしかしたらオフの番外編とかも書くかもしれません。逆に、ここに溜めたネタがいつかオフに再利用されるかもしれません。まあ、要するに全て思いつきです。あと、実験的なネタも書きたいので、死ネタとか変態ネタとかも書くかもしれません。何でもありです。エロはありそでウッフン、なさそでウッフン。(これ何巻だったっけか……) 書いている時間が短いので、多分そんなには入らない。寸止めはよくあると思います。
因みにお題を使うんですが、「1000のお題集」です。わたしは本気です。割と。1日1話としても3年かかるんですがね、終わるのにwww まあ、人間やればできなくはない。実際に1回クリアしてるし、だからきっとできるはず。頑張ります。
あ、因みに書くものは本当にバラバラです。
今までネタ入れにぶっ込んできたアレソレや、連載終わった室町とか平安とかも入るかもしれません。お題に寄ります。また、全く新規の設定で現パロだったり別パロだったりもするかもしれません。アニメ準拠、原作準拠それも様々です。たまには女体化じゃないのも書きます。全てはお題次第です(大切なことなので二回言った)。もしかしたらオフの番外編とかも書くかもしれません。逆に、ここに溜めたネタがいつかオフに再利用されるかもしれません。まあ、要するに全て思いつきです。あと、実験的なネタも書きたいので、死ネタとか変態ネタとかも書くかもしれません。何でもありです。エロはありそでウッフン、なさそでウッフン。(これ何巻だったっけか……) 書いている時間が短いので、多分そんなには入らない。寸止めはよくあると思います。
| 戯言 | 22:07 | comments (x) | trackback (x) |
2011,08,12, Friday
夏コミ合わせでかけらの在庫が復活しました。実際には一般参加ですが、エア夏コミ参加でもあります。
明日は2日目、忍たまの日ですね。わたしもゆっくり参加で買い物に走ります。(;´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア / \ ア / \ ア
イベントは多分スパコミ以来? になるんでしょうか。自分でも記憶が大変曖昧です。暑いかと思いますが、体調に気をつけつつ、楽しんでまいりましょう!^^
明日は2日目、忍たまの日ですね。わたしもゆっくり参加で買い物に走ります。(;´Д`)ハァハァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \ア / \ ア / \ ア
イベントは多分スパコミ以来? になるんでしょうか。自分でも記憶が大変曖昧です。暑いかと思いますが、体調に気をつけつつ、楽しんでまいりましょう!^^
| 連絡事項 | 23:55 | comments (x) | trackback (x) |
2011,08,12, Friday
orz
……そんな感じで、現在再構築中です。一応、ログのバックアップはあるので、うまくすれば復活する。うまくすれば。さて、カテゴリに何作っていたかしらね……
とりあえず、作業中はお見苦しいところもあるかと存じますが、しばしご容赦いただけますと幸いです。
【追記】
とりあえず、ネタ分だけ再度ログをぶっ込みました。日記って読み返すと本当に黒歴史ですね!☆ orz
過去の自分のテンションの高さに打ちのめされるとか思ってもみませんでした。ほかにも何かいろいろ足りてない気がするのですが、わたしは明日も仕事なのでとりあえずこれで寝ます。今日は久々にアイドル久々知の妄想でもしようかな……(´∀`*)ウフフ
……そんな感じで、現在再構築中です。一応、ログのバックアップはあるので、うまくすれば復活する。うまくすれば。さて、カテゴリに何作っていたかしらね……
とりあえず、作業中はお見苦しいところもあるかと存じますが、しばしご容赦いただけますと幸いです。
【追記】
とりあえず、ネタ分だけ再度ログをぶっ込みました。日記って読み返すと本当に黒歴史ですね!☆ orz
過去の自分のテンションの高さに打ちのめされるとか思ってもみませんでした。ほかにも何かいろいろ足りてない気がするのですが、わたしは明日も仕事なのでとりあえずこれで寝ます。今日は久々にアイドル久々知の妄想でもしようかな……(´∀`*)ウフフ
| 戯言 | 03:13 | comments (x) | trackback (x) |
2011,08,12, Friday
「……このバ神崎! お前はいい加減にしろとあれほど……だから、僕が迎えに行くまで教室に残っていろと言っただろう! お前を捜して校内を走り回るこっちの身にもなれ!」
「何の話ですか、田村三木ヱ門先輩。私は生徒会室に向かっていたところなのですが」
ようやく見つけた後輩の腕を引っつかんで怒鳴りつけた三木ヱ門であるが、対する後輩――神崎 左代子(さよこ)の反応に絶句した。以前から――それこそ、彼女が忍術学園の生徒であり、神崎左門という名の少年であったときからの方向音痴は未だ健在であり、それゆえに現在では単独行動を禁じられているにもかかわらずこの発言。抑えていた怒りがふつふつと湧きあがるのを感じながら、三木ヱ門は今にも再び走り出しそうな左代子の腕を掴みなおして睨みつけた。
「お前な、自分が『決断力のある方向音痴』って自覚しているだろう。馬鹿は死ななきゃ直らないと言うが、死んでも直らないとはどういうわけだ?」
「失敬な! 今の私は『決断力のある方向音痴』改め『決断力のある女』なのです。方向音痴じゃありません」
「既に迷ってるだろうが! 今何分か分かってるか!? お前が教室を出た時刻が午後三時過ぎ、今は午後三時半だ! 因みにお前の教室から生徒会室までの距離は時間にしておよそ五分! 方向音痴でなければとっくのとうに生徒会室に辿り着いているんだよ!」
唇を尖らせる左代子に三木ヱ門は苛々と怒鳴りつけた。彼女を迎えに行けば、既に出たと同じく方向音痴の次屋三之助(こっちは相変わらずの無自覚だ)にそう告げられ、さらに富松作兵衛に何度も頭を下げられたのだ。こちらも相変わらずの妄想癖を発揮する富松を宥めすかして落ち着かせ、三木ヱ門は目撃情報を辿って校舎内を右から左へと駆け回り、そうしてようやく今彼女を発見したというわけだ。左代子が大人しく教室で待っていればこんな無駄をすることはなかったのに、と三木ヱ門は大きな溜息をつき、人の話を聞かずに駆け出そうとする左代子の腕を引いた。
昔はそれなりに力もあった左代子だが、現在の性別は女、今生でも男に生まれた三木ヱ門の力に敵うはずはない。それを承知の三木ヱ門は己の身体でよろめいた左代子を受け止めると、その腰を攫ってまるで荷物か何かのように左代子を小脇に抱えた。
「ちょっと! 何をするんですか!」
「うるさい、バ神崎! お前はもう自分の足で歩くな、面倒だから! こら、暴れるな、大人しくしろ! ほら、生徒会室に行くぞ!」
「ちょっと! セクハラですよ、田村先輩! 放してくださいー!」
「こんなときだけ現代語を駆使しおって腹立たしい! セクハラだの何だの言う暇があれば! 今すぐ校内地図を頭に叩き込み、正確な方位を掴んで、全ての教室に寄り道せずに向かえるようにしろ!」
同学年でのあだ名が「豆タンク」と聞いて、思わず納得してしまった三木ヱ門である。男としては決して大柄ではない三木ヱ門が軽々小脇に抱えられるほど、左代子の身体は小さい。そのくせ元気いっぱいに勢いよく走り出してはどこかへ消えていくこの少女にはまさに相応しい例えであろう。未だ己の脇の下で暴れている左門を抱えなおしたあと、三木ヱ門は小さく溜息をついた。
「いいか、次からは必ず教室にいるようにしろ。それならこんな風に抱えたりもせずに、ちゃんと生徒会室に連れていってやる。第一、富松にも止められたんじゃないのか? あいつ、可哀想なくらい僕に謝っていたぞ」
「作兵衛は心配性過ぎるんですよ! 私なら大丈夫なのに」
「大丈夫じゃなかっただろうが! あーもういい、時間が勿体ない! 早く生徒会室に行くぞ!」
「ちょっと、下ろしてからにしてくださいよ!」
「下ろした瞬間に走り出す気満々だろうが、お前! 良いから大人しくしていろ!」
ぎゃんぎゃん、と脇の下で暴れる左代子とやり合いながら、三木ヱ門は歩き出す。その心はまだ憤懣やるかたない気持ちでいっぱいだったが、そのすぐあとに聞こえた耳慣れた大声に彼は少しだけ慰められた。
『三之助、いい加減にしろ!』
よく通る高い声は、現世では女子に生まれた己の同輩だ。――彼女もまた、同じ委員会の方向音痴な後輩に悩まされている同士でもある。しかし、彼女は自分とは正反対に後輩が男のまま生まれ、彼女自身は女子に生まれている。その分、身体能力にも差が生まれ、後輩を捕らえるのに苦労しているらしい。最終的に縄で捕獲するまでになっている彼らの様子を見れば、同じく方向音痴のじゃじゃ馬であっても、こうして簡単に捕獲できる己のほうがまだマシのような気がするのだ。それがドングリの背比べだとは気づかぬまま、三木ヱ門は少し気分を持ちなおして未だ暴れる左代子を揺らすことで黙らせ、生徒会室へ歩き始めたのだった。
| SS::記憶の先 | 03:10 | comments (x) | trackback (x) |
2011,08,12, Friday
久々知は親が巨額の借金を残して蒸発した可哀想な身の上の女子高生で、借金取りに追われているところをメイクアップアーティストのタカ丸さんに助けられるんですが、それが縁でアイドルとしてスカウトされ……という話です。そのあと、タカ丸さんが転職して久々知のマネージャーさんになります。補佐に鉢屋(本来はこいつが久々知マネだった)。因みにプロダクションの社長は仙蔵でした。久々知はウィンク系の無表情不思議系アイドルだと思う。割と歌は上手くて、真面目で天然な久々知は人前で歌うんだから、とボイトレとかダンスの練習にめっちゃ通ってるはず。そのくせお堅いので、歌の前のトークとかではめっちゃ礼儀正しい。歌っている歌は割とハードだったり色物だったりするそのギャップに、みんな「ざわっ……」となってればいいよ。
最終的に借金を返すことが本来の目的なので、金を返せば引退、という契約だったのですが、仙蔵社長がドラマとか映画とか割と無茶振りしてくるので、久々知は毎度胃がきりきりしてました。練習は全部タカ丸さんとやります。つか、この二人はプロダクション所有のマンションで一緒に暮らしています。アイドルなのに良いのか、と思わないでもないのですが、多分常日頃から久々知がマネのタカ丸さんにべったりだから、多分他の人も「あー」で済ませてしまいそうな感じ。移動の車のなかではタカ丸の膝枕で久々知は寝てるよ。「マネのひよこ」とか陰口叩かれてるかもしれないけど、久々知は「事実だから」と気にしない。久々知の化粧と衣裳は全部タカ丸さんがやる。でも二人ともアイドルに関してはずぶの素人だから、実質のスケジュール管理は三郎がやってる。たまに付き人として雷蔵が来てくれる。竹谷は久々知の同級生で、TVで久々知を見てリアルにジュース噴く。
久々知はタカ丸さんが好きだけど、タカ丸さんは自分に同情してるだけだし、こんな子ども相手にしないだろう、と恋心を秘めている。でも、子どもの特権でものごっつ甘えてる。たまに一緒のベッドで寝てる。この久々知は割と精神的に不安定なので、時折カウンセリングにも行ってます(親が自分を置いて蒸発したことと借金取りに追われたことへのトラウマ)。
タカ丸はタカ丸で久々知のことが好きで大切で守ってあげたくて今までのメイクの仕事とか全部捨ててマネージャーになっているけど、久々知は若いしアイドルだしで手を出せるわけもなく……自分にだけ甘えてくれるのがめっちゃ嬉しくて、とにかく甘やかしている。おはようからおやすみまで尽くす男斉藤タカ丸になっている。一緒のベッドで寝るのは正直辛いけど、寝ながら自分にしがみついて泣いてる久々知とか見ると、もう邪な考えとか全部吹っ飛ぶ。この二人はいつもお互いしか見えてないよ!www
……とそんな妄想をしていました。アイドル久々知いいよね。ハードなダンスからバラードまでこなすよ。野太い声で「兵子ちゃ〜ん!」って叫ばれても会釈で返すよ。アイドルなのに笑顔はあんまりないけど、そこがいいとマニアックなファンが増えています。
| 戯言::ネタ | 03:07 | comments (x) | trackback (x) |
TOP PAGE △