2011,08,25, Thursday
「目元アップ! 口元アップ! 髷アップ! 今日も素敵な滝夜叉丸!」
決まった、と滝夜叉丸は口の端を持ち上げた。美しく全てに才長けた己には、それに相応しい登場の仕方がある。赤い薔薇を手に屋根から降り立った滝夜叉丸は、その薔薇を天にかざしてもう一度ポーズをとった。
「……滝夜叉丸先輩……」
本来ならばここで拍手喝采が起こるはずが、聞こえたのは同じ委員会の後輩が漏らしたうんざりとした調子の呟きのみ。不審に思って彼が視線を戻せば、そこに集まっていた後輩三人はそれぞれにげんなりとした表情で滝夜叉丸を見つめていた。
「ないわ……」
ぼそりと呟いたのは一つ下の三之助だ。それに滝夜叉丸が鋭い視線を投げれば、彼は露骨に嫌な表情を作る。その生意気な態度に滝夜叉丸が物申そうとしたそのとき、傍の後輩がそれぞれ小さな悲鳴を上げた。驚いて振り返れば、地面に何やら盛り上がりが続いている。もぐらの通った跡のようなそれの原因に滝夜叉丸が気づくよりも早く、彼の目の前に大きな影と土砂が飛び込んできた。
「いけいけどんどーん!」
「ひっ……!」
鼓膜を震わす大きな声に滝夜叉丸は思わず喉を引き攣らせた。彼がそれを目視するより早く、その影は滝夜叉丸の首をその腕に抱え込む。ぐ、と強く彼の喉元を絞め上げる腕に、滝夜叉丸は思わず声を張り上げた。
「七松先輩、変な登場の仕方をしないでくださいっ!」
「何おう!? お前だって随分変な現れ方をしたではないか! それに比べて私なんて地味なものだろう! それよりも、ほら全員で塹壕を掘るぞ! いけいけどんどーん!」
滝夜叉丸の首を腕に入れたまま、小平太はさらに傍に居た金吾を片手で捕まえる。その横にいた四郎兵衛にも声をかけ、呆然とそれを見守っていた三之助にも視線を送る。それだけで彼らは今日の委員会もまた地獄であることを理解し、ただ委員長の告げる活動を遂行するために各々苦無を取り出したのだった。
決まった、と滝夜叉丸は口の端を持ち上げた。美しく全てに才長けた己には、それに相応しい登場の仕方がある。赤い薔薇を手に屋根から降り立った滝夜叉丸は、その薔薇を天にかざしてもう一度ポーズをとった。
「……滝夜叉丸先輩……」
本来ならばここで拍手喝采が起こるはずが、聞こえたのは同じ委員会の後輩が漏らしたうんざりとした調子の呟きのみ。不審に思って彼が視線を戻せば、そこに集まっていた後輩三人はそれぞれにげんなりとした表情で滝夜叉丸を見つめていた。
「ないわ……」
ぼそりと呟いたのは一つ下の三之助だ。それに滝夜叉丸が鋭い視線を投げれば、彼は露骨に嫌な表情を作る。その生意気な態度に滝夜叉丸が物申そうとしたそのとき、傍の後輩がそれぞれ小さな悲鳴を上げた。驚いて振り返れば、地面に何やら盛り上がりが続いている。もぐらの通った跡のようなそれの原因に滝夜叉丸が気づくよりも早く、彼の目の前に大きな影と土砂が飛び込んできた。
「いけいけどんどーん!」
「ひっ……!」
鼓膜を震わす大きな声に滝夜叉丸は思わず喉を引き攣らせた。彼がそれを目視するより早く、その影は滝夜叉丸の首をその腕に抱え込む。ぐ、と強く彼の喉元を絞め上げる腕に、滝夜叉丸は思わず声を張り上げた。
「七松先輩、変な登場の仕方をしないでくださいっ!」
「何おう!? お前だって随分変な現れ方をしたではないか! それに比べて私なんて地味なものだろう! それよりも、ほら全員で塹壕を掘るぞ! いけいけどんどーん!」
滝夜叉丸の首を腕に入れたまま、小平太はさらに傍に居た金吾を片手で捕まえる。その横にいた四郎兵衛にも声をかけ、呆然とそれを見守っていた三之助にも視線を送る。それだけで彼らは今日の委員会もまた地獄であることを理解し、ただ委員長の告げる活動を遂行するために各々苦無を取り出したのだった。
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