0023 リストラ
 随分と疲れた顔をしている、と無言でそろばんを弾く最上級生を見ながら三木ヱ門は思った。しかし、きっとそれは自分も同じだろう。もう何日寝ていないのだろうかと指折り数えようとして、虚しくなってやめた。そんな時間があるならば、一行でも多く帳簿の計算を進めるべきだ。――とくに、自分以外の下級生が沈没した今は尚更。
 今の自分を鏡で見たくない、と三木ヱ門はそろばんを弾きながら溜息をついた。きっと仕事も生き甲斐も失ったうらぶれた中年のような顔をしているのだろう。学園のアイドルであるはずの自分が何ということだろう。しかし、そうは言っても目の前の帳簿計算が終わらない限り、三木ヱ門はアイドルとしての輝きなど取り戻せそうにない。次第に霞む視界を目に力を込めてやり過ごしながら、三木ヱ門は親の敵のように見えてきた帳簿に再び意識を向けたのだった。
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