0011 地獄巡り
「よし! 今日は裏々々々々々々山まで登ったり下りたりしたあと、みんなでバレーボールしよう!」
 委員会開始早々に告げられた言葉に、平滝夜叉丸以下体育委員会の面々は揃って顔を引きつらせた。それもそのはず、今委員長が告げた言葉にいくつ「裏」が入っていただろうか。しかも、登ったり下りたり、と簡単に言うが、実際に行く道は平坦どころか獣道も良いところなのである。委員のなかで誰よりも早く我に返った滝夜叉丸は、背後で始める前から魂を飛ばしている下級生二人に気づき、精一杯の険しい表情で目の前の青年へと口を開いた。
「な、七松先輩! いくらなんでも無茶苦茶すぎます!」
「何が?」
 しかし、返ってきた言葉は彼の危惧など気づいてすらいないもので、滝夜叉丸は思わず絶句した。――しかも、これが本気なのだから性質が悪い。
「何が、って……」
「ほら、早く準備しろ! 出発するぞ!」
 追い撃ちをかけるように告げられた言葉に、滝夜叉丸は今度こそ絶句する。どうしたら、と別の切り口を求めて周囲を見遣れば、ひとつ下の後輩が下級生二人の魂を鼻から戻していた。その瞳には既に諦念が浮かんでおり、滝夜叉丸はそれ以上もう何も言うことができなくなる。魂を戻された下級生たちも委員長の様子を見て抵抗は無駄だと悟ったらしく、暗い顔で走る準備をしはじめた。けれど、その背中があまりにも悲痛であったため、滝夜叉丸はせめてもの抵抗として口を開いた。
「七松先輩……登ったり下りたりは一回までにしましょう」
「何で?」
「……バレーボールもなさりたいのでしょう? 裏々々々々々々山まで何度も登ったり下りたりしたら、すぐ夕飯の時間になってしまいますよ」
 これは事実だ。それ以前に、裏々々々々々々山まで往復する時間があるかどうかも怪しい。勿論、小平太と滝夜叉丸だけならば彼の望みを叶えることもできよう。しかし、ここには無自覚方向音痴の三之助にまだ体力のない四郎兵衛、金吾がいるのだ。彼らのことを考慮すれば、どうしたって時間は有り余るほどに必要になる。
「……さすがに仕方がないかあ」
 さすがの小平太も下級生の体力については把握しているらしい。とにもかくにも何とか下級生たちを屍にしないで済みそうなことに滝夜叉丸は胸を撫で下ろしながら、それでも地獄の入口となるであろう忍術学園の校門を見て深い溜息をついたのであった。
| SS::1000のお題集 | 19:59 | comments (x) | trackback (x) |

  
CALENDAR
S M T W T F S
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31       
<<   08 - 2025   >>
OTHERS
POWERED BY
POWERED BY
ぶろぐん
SKIN BY
ブログンサポート

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル